中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、空港などからの出入国者について規制を強化する方針を決定した。旅行書類やビザを厳しく審査する一方で、国民に対して、「絶対に必要な場合以外は国外に出ないようにすべきだ」と呼びかけている。とくに、パスポートコントロールでは出国者に対して、どのような目的で海外に渡航するのかなどをしつこく質問し、不要不急ではない場合、パスポートを没収したり、パスポートの角をハサミで切り取って無効にしたりするなどの厳しい措置がとられている。
中国国家移民局は5月初旬、出入国管理部門が「最高レベルの予防と管理を続けている」とし、国境や空港での入国者の感染確認対策を厳格に遂行するとともに、出国者数を「低レベル」に抑えるように指導していることを明らかにした。
また、国境警備を担当している中国国家安全省も「近隣諸国の法執行機関と密接に協力して、違法な出入国活動を厳しく取り締まっている。中国内でも陸・海・空の検問所の国境警備隊が現地の状況や事情に応じた措置をとっている」などとしている。
ネット上の書き込みによると、広東省広州の空港では、バンコクから中国南方航空便で到着した中国人が入国管理官から「どのような目的で海外に出たのか。なぜ中国に戻ってきたのか。再び出国する予定があるのか」などとしつこく質問されたとのこと。乗客の中にはパスポートの角を切り落とされ、今後、海外渡航ができなくなった者もいたという。
また、中国から海外に留学する予定の人が飛行機に乗ろうとしたら、パスポートを切り取られたという事例や、パスポートを申請したら拒否されたという報告が、ソーシャルメディア上で相次いでいる。
このような事例について、南方週報(電子版)は「中国政府が出国する中国人の数を減らそうとしている。出国すれば、新型コロナ対策に関する世界の状況がわかってしまうからだ。また海外から戻ってきた人が再び海外に出ないようにパスポートを切ってしまうのもよくあることだ」と報じている。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が10日、新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める中国の「ゼロコロナ」政策について、「持続可能とは思えない」と批判したが、その翌日、中国のネット検閲当局は国内の各SNSなどに掲載されているテドロス氏の写真、講演、関連投稿を削除した、とロイター通信は伝えている。