国際情報

ウクライナ現地レポート ミサイル飛び交う街で生きる人たち

空爆で一部が倒壊したアパート。7階に住んでいたオレグさん(53)は部屋が粉々に破壊され、頭部に大怪我を負った。「額から大量の血を流し、病院に1週間入院しました」【チェルニーヒウ】

空爆で一部が倒壊したアパート。7階に住んでいたオレグさん(53)は部屋が粉々に破壊され、頭部に大怪我を負った。「額から大量の血を流し、病院に1週間入院しました」【チェルニーヒウ】

 今も夜間の外出禁止が続き、空襲警報が鳴り響くなか、怯えながらも明日の平和を信じて前を向く多くの人々がいる。長期化するロシアによるウクライナ侵攻を、現地で取材を続けるノンフィクションライター・水谷竹秀氏が戦禍の街を伝える。

 * * *
 戦火のウクライナに入ったのは3月末、ちょうどロシア軍が首都キーウ近郊から撤退し始めた時期だった。ポーランドを経由したため、まず西部の都市リヴィウでウクライナ軍兵士の葬儀を取材した。墓地で泣き崩れる妻の姿が思い出されるが、その記憶が随分昔のように感じられるのは、これまでの日々が非日常的で、濃密だったからだろう。

 キーウ近郊にある“虐殺の町”ブチャでは、道端に転がる頭部のない遺体に遭遇し、夫を射殺された妻の嘆き声に耳を傾けた。空爆されたボロディアンカでは、アパートが黒こげになり倒壊し、瓦礫の下から約40人の遺体が見つかった。それらの現場を目の当たりにするたび、戦争の恐ろしさもさることながら、自国を守ろうとする人々の信念や逞しさに心を揺さぶられた。

 キーウでは今も警報が鳴り響く。夜間外出禁止令も継続中だ。それでも日中は人々の姿が増え始め、日常を取り戻しつつある。

 一方でウクライナ東部は現在も激しい戦闘が続き、街にはミサイルが飛び交う。5月9日の戦勝記念日でプーチン大統領は“戦争宣言”こそしなかったものの、「我々はいまだドンバスのために、ロシアの安全のために戦っている」と強調、状況は依然として予断を許さない。

「Slava Ukraini!(ウクライナに栄光あれ!)」。取材中、何度も口にした合言葉が今も耳に響く。

【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年生まれ。上智大学外国語学部卒業。2011年『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞。現在ウクライナで取材中。

※週刊ポスト2022年5月27日号

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
【常盤貴子インタビュー】50代のテーマは「即興力」 心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたい
週刊ポスト
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン
大谷夫妻の第1子誕生から1ヶ月(AFP=時事)
《母乳かミルクか論争》大谷翔平の妻・真美子さんが直面か 日本よりも過敏なロスの根強い“母乳信仰”
NEWSポストセブン
麻薬の「運び屋」として利用されていたネコが保護された(時事通信フォト)
“麻薬を運ぶネコ” 刑務所の塀の上で保護 胴体にマリファナとコカインが巻きつけられ…囚人に“差し入れ”するところだった《中米・コスタリカ》
NEWSポストセブン
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
〈ちゅーしたら魔法かかるかも?〉被害女性が告白する有名ホストクラブの“恐ろしい色恋営業”【行政処分の対象となった悪質ホストの手練手管とは】
NEWSポストセブン
公務のたびにファッションが注目される雅子さま(撮影/JMPA)
《ジャケットから着物まで》皇后雅子さまのすべての装いに“雅子さまらしさ“がある理由  「ブルー」や小物使い、パンツルックに見るファッションセンス
NEWSポストセブン
小室圭さんと眞子さん(2025年5月)
《英才教育》小室眞子さんと小室圭さん、コネチカット州背景に“2人だけの力で”子どもを育てる覚悟
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
【ステーキの焼き方に一家言】産後の小室眞子さんを支えるパパ・小室圭さんの“自慢の手料理”とは 「20年以上お弁当手作り」母・佳代さんの“食育”の影響
NEWSポストセブン
不正駐輪を取り締まるビジネスが(CPGのHPより)
《不正駐輪車を勝手にロック》罰金請求をするビジネスに弁護士は「法的根拠が不明確」と指摘…運営会社は「適正な基準を元に決定」と主張
NEWSポストセブン
「子供のころの夢はスーパーマンだった」前田投手(時事通信フォト)
《ワンオペ育児と旦那の世話に限界を…》米国残留の前田健太投手、別居中の元女子アナ妻が明かした“日本での新生活”
NEWSポストセブン
眞子さんと佳子さま(時事通信フォト)
《眞子さん出産発表の裏に“里帰りせず”の深い溝》秋篠宮夫妻と眞子さんをつないだ“佳子さんの姉妹愛”
NEWSポストセブン