女子ゴルフ界にまた新たなヒロインが現われた。2005年の宮里藍(当時20)に次ぐ若さで、国内メジャー「ワールド・サロンパス・カップ」を勝ち切った山下美夢有(20)。21世紀生まれ(2001年)の「新世紀世代」の選手で初めて国内メジャータイトルを手にした。
山下の同世代には、昨年の全米女子オープンでメジャーを制した笹生優花(20)や今季4勝の西郷真央(20)がいる。特筆すべきは、身長が150cmと小柄な体型ということだ。
本来、体が小さいのはアスリートとしては不利で、ドライバー平均飛距離は235ヤード。300ヤード近く飛ばすこともある笹生(166センチ)らと比較すると“飛ばない”と言える。
しかし、近年は「小柄ゴルファー」が次々と躍進を遂げている。山下の1つ年上の「プラチナ世代」の西村優菜(21)が150cm、米ツアーに参戦中の古江彩佳(21)も153cm。今季絶好調の同期・西郷真央も158cmと全体平均(161cm)よりは低い。
なぜ勝てるのか──。そこにはゴルフ特有の体型による一長一短が関係しているのかもしれない。クラブデザイナーの松尾好員氏が言う。
「当然、体格がいいほうがドライバーの飛距離という面では圧倒的に有利です。スイングに高さが出て、ヘッドスピードも上がりやすいからです。一方で、身長が高いとボールとの距離も遠くなります。球をミートするのが難しくなるためミスショットが出やすい。歴史的に見ても身長2mを超す有名ゴルファーは思いつきません」
またプロゴルファーの沼沢聖一氏は現代では「三拍子揃った選手が求められている」と語る。
「実は宮里藍や横峯さくらも小柄(ともに155cm)です。ドライバーが飛ばなくても、完成度の高いコンパクトなスイングから2打目以降を常に条件のいい場所から狙える位置につけるためピンに絡むことが多い。体力差を補おうとグリーン周りの練習に時間を割くためアプローチ、パターと“ショートゲーム”にも長けた選手が多いのでしょう」
小柄な選手だからこその戦い方もあるのだろう。
※週刊ポスト2022年5月27日号