米電気自動車大手テスラのCEOを務めるイーロン・マスク氏が5月7日、ツイッターで「当たり前のことを言うようだけど、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」と投稿。突然「日本」が名指しされたことが波紋を広げ、「日本消滅」がトレンド入りして、ニュースやワイドショーでも取り上げられた。
テスラ社がヒト型ロボット「オプティマス」の開発を進めていることから、「(人手不足を補うための)自社のロボットビジネスを拡大するための発言なのでは」とする声や「マスク氏は火星移住が最終目標だから、早く地球に人を溢れさせたいのでは」といった憶測が飛び交った。
マスク氏の「日本消滅発言」の真意は一体どこにあるのか。本人への取材経験もあるジャーナリスト・大西康之氏は「極めてマスク氏らしい発言」と冷静に読み解く。
「マスク氏は自身がアスペルガー症候群だと明かしていますが、とにかく思いついたことをそのまま言うところがあるようです。現実的に考えたらいろんな要素があってその通りにはいかないよ、ということでも理論上成立すれば真面目に語る。
これまでにも、環境破壊が進めば人類は地球に住めなくなるからと、ガソリン車をやめてEV車を開発したり、さらにその先も見据えて、火星移住計画に取り組んだりしてきた。今回の発言も、出生率が死亡率を上回らない限り日本が消滅するというロジックは間違っていないよね、というだけのことでしょう」
とはいえ、人口減少の問題に直面している国は日本だけではない。「名指し」されたことをポジティブに捉え、「マスク氏は日本に期待して鼓舞しているんだ」といった声もネットにはみられたが、大西氏はもっとシンプルな読み方をする。
「日本に対して特別な思いがあるからというよりは、日本が先進国の中でも特に少子高齢化が進み、人口減少社会の先頭を行っているからでしょう。このままいくと最初に日本が滅び、それはいずれ地球レベルで起きることなのだという、全人類の未来への警鐘であり、彼なりの大真面目なメッセージだと考えられます」
ビジネスの世界でマスク氏は、実現不可能と思われる未来を“予言”し、次々と現実のものにしてきた。今回については、現実とならないことを願いたいが……。
※週刊ポスト2022年5月27日号