放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、序盤の和やかなホームドラマから一転、物語は身内で謀略が行き交う緊張の中盤にさしかかる。史実では今後、「承久の乱」など主要キャストにさらなる重大事件が待ち受ける。中盤から気になるラストシーンにかけて、激動の歴史を脚本の三谷幸喜氏はどう描くのか。
源実朝(柿澤勇人)の死後、幕府の混乱を好機と捉えた後鳥羽上皇(尾上松也)は「北条義時追討」の命を発し、幕府最大の権力者となっていた北条義時(小栗旬)の排除を決断する。しかし東国武士の進撃に屈し、上皇方は大敗。これが「承久の乱」だ。歴史研究家の河合敦氏が語る。
「義時追討の宣旨が出されると、義時は動揺し、なかなか上皇方と戦おうとしなかった。その時、鎌倉武士たちを叱咤し、結束させたのが北条政子(小池栄子)です。今回の大河では、小池・政子は少し抜けたところもあって、感情の起伏が激しいコミカルな人物として描かれている。でも承久の乱に向けて、どんどん有能で力強いキャラクターに変わっていくはずです」
尼将軍と称されるようになる政子だが、時代劇研究家のペリー荻野氏はこんな期待も寄せる。
「“強い政子”の一方で、小池・政子のお茶目な部分も消えないでほしい。政子は第2の主人公であり、三谷氏は人間ドラマを丁寧に書くと思います。『草燃える』でも、ほとんど政子役の岩下志麻さんのドラマと言えるほどの存在感でしたから」
三谷氏が初めて描く「勝ち組主人公」の最期
過去に三谷氏が大河ドラマで描いてきた主人公は、『新選組!』(2004年放送)の近藤勇も、『真田丸』の真田幸村も、最後には敗れる「悲劇のヒーロー」だった。最後まで権力闘争に勝ち続けた義時のラストはどうなるのか。
『吾妻鏡』によると義時は承久の乱の3年後に病に倒れ、62歳で死亡する。
「後妻・伊賀の方に毒殺されたという説もあり、そのほうがドラマチックではありますが(笑)。『新選組!』は近藤勇が斬首される瞬間、パッと暗闇になって終了となりましたが、今回の義時も、みんなに看取られながら布団で死ぬといった平和な終わり方はしないでしょう」(ペリー氏)
河合氏は、ラストシーンを飾るのは義時ではなく政子だと予想する。
「義時が急死した後、動揺する幕府を支えたのが政子でした。政子が夫の頼朝の墓のとなりに義時を葬るシーンがラストになる可能性もあります」
“予測不能エンターテインメント”で最後に笑うのは誰か。
※週刊ポスト2022年5月27日号