王座戦挑戦者決定戦トーナメント1回戦で、藤井聡太竜王(19)が敗退する波乱が起きた。5月6日の対局を制した大橋貴洸六段(29)は対藤井戦4連勝となる“藤井キラー”だ。
今回の勝利も「番狂わせ」ではないと将棋ライターの松本博文氏は話す。
「対藤井戦にだけ強いわけではなく、大橋さんはもともと実力がある。通算200局以上指している棋士のなかで藤井さんの次に勝率が高く、コンスタントに勝ち続けています。非常に真面目な棋士で、今回の対局も相当な準備をしてきたんだと思わせる棋譜でした」
将棋界のホープとして期待される大橋六段だが、注目を浴びているのは強さだけではない。ピンクや紫といった派手なスーツ姿で対局に登場することでも知られている。
「将棋界のファッションリーダーですよね。絶対に他の人は真似できないような紫や緑の華やかなスーツを着こなしている。本人は面白さや奇抜さを狙っているわけではなく極めて真面目に服を選んでいるようです。
今回の藤井戦はグレーの上着だったので“珍しく地味だな”と思ったら、ピンクのパンツとのコーディネートだった(笑)。TPOも考えていて、自分が対局者の時は主役だから目立つ格好をするけれど、解説者の時はちょっと地味な服で来るそうです」(同前)
棋士でオシャレと言えば名人経験者で“貴族”の愛称もある佐藤天彦九段(34)が知られているが、大橋六段は服装のセンスでも“新星”というわけだ。個性的なのはファッションに留まらない。
「去年のクリスマスには、自分のオリジナルブランドのチョコレートを限定160個発売していました。自身のツイッターで告知したところ、あっという間に売り切れた。私も欲しかったのですが、間に合いませんでした。
棋力が伴わなければ、『そんな面白い人もいるよね』で終わりますが、大橋六段は強い上に個性的であるところが、ファンから支持されています。
この王座戦で挑戦者に勝ち上がり、初タイトルを獲っても不思議ではありません」(同前)
タイトル戦に華やかな和服姿で登場する日も近いかもしれない。
※週刊ポスト2022年5月27日号