芸能界のみならず、日本中に衝撃を与えたダチョウ倶楽部・上島竜兵さん(享年61)急逝のニュース。生き馬の目を抜くような芸能界で成功し、仕事にも仲間にも恵まれていたように見える。近くには常に夫を気遣う妻もいた。それでも悲劇を避けられなかった。
2020年10月、化粧品の新商品発表会に出席した上島さんは、「おでんも卵も飛ばせなくなっちゃった。熱湯風呂も溺れてピュピュッて水吐けなくなった。けんかしてチューもできない。何にもできないオヤジになっちゃった」と苦境を吐露して笑いを誘っていた。上島さんの知人は言う。
「原因は仕事が減ったことで経済的に不安になったとの声がありますが、金銭苦によるものではないと思います。俳優業でも稼いでいたし、お金はひかるさん(妻の広川ひかる)がしっかり管理していた。それよりも芸人仲間が口にするのが、上島さんが感じていたであろう孤独感です。ナイーブで真面目な人だけに、(コロナ禍で)仲間との公私にわたる交流がなくなったことは相当堪えていたようです」
精神科医の片田珠美さんは、「上島さんの場合、やはり『初老期うつ』が疑われます」として、こう指摘する。
「50代から60代半ばの初老期に発症するうつ病を『初老期うつ』と呼びます。これは何らかの喪失体験がきっかけになることが多いといわれています。上島さんは、コロナで志村さんという大切な人を失い、自分の芸を披露する機会がなくなり、仲間たちとの憩いの場もなくなった。
しかも、“気遣いの人”だったと聞いています。こうした性格の人は、『メランコリー親和型性格』といわれ、他人に迷惑をかけられないと思い込み、相談すらできない傾向にあります。そのため、うつ症状はどんどん進行していく恐れがあります」
こうした場合、妻はどう対処すべきなのだろうか。
「喪失体験に直面した中高年男性がひとりでお酒を飲むと孤独感が強くなり、自分の世界に入り込んでどんどん悲観的になりやすい。広川さんが上島さんと一緒にお酒を飲んだのはとてもよい対応でした。
次に取るべきは、治療を始めさせることです。そのためにもサインを見逃さないこと。一般的に喪失感を抱えて心身に不調をきたしたら、次のような兆候が出ます。
【1】不眠
【2】食欲不振
【3】不安や焦燥感
このようなサインが出たら、早めに病院を受診させましょう。いきなり心療内科だと拒否反応を示すようなら、最初は“疲れてそうだから内科に行こう”でもいい。そこで、心療内科を紹介してもらえばいいのです。妻じゃなく医師に診断されることで、心の問題でも受け入れやすくなります」(片田さん)