彼らより1、2才若かった頃の話を、新入社員は身を乗り出してうなずいたり、メモをとったりしている。インタビューは、要は人から話を聞くことで、そのときに大事なのは鋭いツッコミなんかではなくて、まあ、人間性だよね。聞き手のちょっとした返しで話の展開がどんどん変わってくるし。

「いまの新人ってみんな優秀でしっかりしてますよ。比べたらオレたちの頃は全然できてなかったと思いますね」と、私たちの控室で、小学館の系列会社のT社長がおっしゃっていたけど、じわじわとわかってきた。新卒でこの安定感は何?

「ライターとしての初仕事は男性週刊誌で、若い女性の性体験の取材をしたのよ。友人・知人から話を聞いたり、街頭で知らない人に声をかけて飲食店に連れ込んで洗いざらい聞かせてもらったり」
「えっ、いきなり声を?」
「そう。行きずりだから話せるってことが人にはあるの。特に自分の夜の体験談とかは」
「なるほどです」

 他人にこれまで話したことがない話が、スルスルと口から出てくるのは、彼らの目の輝きとタイミングのいい相槌が心地いいから。だけど、ふいにそのそつのなさが怖くなってきたんだわ。

 で、最後に「オバ記者さんは、社会人として働く上で大事だと思うことは何ですか?」と聞かれてあらぬことを口走っていたの。

「仕事がすごくキツくなったら逃げろ、かな。なんでもかんでもガチでやればいいってもんじゃないよ。これはムリだと思ったら、2、3日ズル休みしても、戻ってくればちゃんと給料が出るんだから。ま、上手に自分の機嫌をとりながら働いて、そうそう、せっかくここで出会ったんだからいつか私にお仕事ちょうだいね(笑い)」

 お粗末!

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2022年6月2日号

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