高齢になってからの骨折。実はがんや脳卒中と同じくらい高齢者の生活の質(QOL)を低下させ、最悪、生命を脅かす場合があるという。日本骨粗鬆症学会は、こうした命にもかかわる骨折を『骨卒中』と呼び、多方面に警鐘を鳴らしている。
死に至るリスクをはらむ骨卒中を防ぐには、どうすればいいか。まずは事前に兆候を掴むことが重要になる。骨粗しょう症専門外来を設置している「むつみクリニック」の金光廣則院長が語る。
「身長が縮むほか、背中や腰が痛くなったり、背中や腰が曲がったりすることがサインとなり、受診してレントゲンを撮ってみたら骨が折れていたという事例が多い。背骨や腰が『痛む・曲がる』という症状がみられたら、注意が必要です」
近年はリスクの検査も簡易化している。鳥取大学医学部保健学科教授の萩野浩氏が語る。
「WHOが開発した『FRAX』というシステムでは、10年以内の骨折発症リスクを無料で調べることができます。インターネットで簡単なアンケートに答えるだけで予測結果が出るので、気になる方は活用すると良いでしょう。また、各種検査や人間ドックで骨密度検査ができるので、こちらも受けるようにしましょう」
毎日の食事も骨卒中の対策に欠かせない。丈夫な骨を保つためには、カルシウム以外の栄養素も重要となる。原宿リハビリテーション病院名誉院長の林泰史氏が語る。
「サケやサンマ、きくらげなどに含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を促します。また、納豆に多く含まれるビタミンKは骨の質を上げ、乳製品や大豆製品に多く含まれるたんぱく質は筋肉のもとになります。これら3つの栄養素をカルシウムとともに摂取することが大切です。ビタミンDは日光を浴びることで合成されるので、日光浴も心がけましょう」
日常生活において、運動する習慣をつけることも大切だ。
「運動自体には骨密度を増やす効果はわずかしかありませんが、足腰を鍛えれば転倒しにくくなる。効果的なのが、目を開けたまま片脚をあげる『開眼片脚立ち』トレーニング。バランス能力が向上し、太ももの筋力も鍛えられて転倒予防に繋がります。ウォーキングやラジオ体操など、自分が取り組みやすいエクササイズを組み合わせるのも効果的です」(萩野氏)