年齢を重ねれば、必ず向き合わなければならないのが「目の悩み」だ。重篤な症状に陥る前にまず頼るべきは眼科医だが、その技術と姿勢は千差万別。人生を暗転させないために、医者選びも重要になってくる。
新緑の眩しい5月のゴールデンウィーク。神奈川県在住・60代男性のAさんは、旅行先から帰路につく運転中に視界の異変に気づいたという。
「ここ2、3年、気づかない間にセンターラインをオーバーしていたり、高速道路の合流車が急に出てきたような感覚が何度かありました。疲れているのかなと当時は気にしなかったのですが、この日は駐車時にも視界が歪んで、なんとなくイヤな違和感があった。
自宅に近づいた時、いつも運転している道の交差点の信号がふと見えなくなって。『何かおかしい』とそこで初めて異変を自覚し、眼科に駆け込みました」
Aさんの診断結果は重度の緑内障。左目の約2分の1の視野が欠けており、視野が回復することはないと告げられた。
Aさんのように、「なんだか視界が狭い気がする」「メガネの度数が合わなくなってきた」など、年とともに目についての違和感を持つ人は少なくない。こういった些細な目の不調が、実は深刻な目の病気の初期症状だったというケースが急増している。
厚生労働省の「平成29年患者調査」によると、同年、眼科にかかった総患者数は国内で約370万人。過去10年で約90万人増加しており、さらにうち約226万人を65歳以上の高齢者が占めている。社会の高齢化やデジタル化とともに、目の病気は増加の一途をたどっているのだ。
二本松眼科病院副院長の平松類医師が解説する。
「人間は五感の中でも視覚から多くの情報を得ているので、目の状態はその人のQOL(生活の質)に直結します。白内障などで視力の悪い人は、視力が正常な人よりも認知症になる確率が16%高いとの報告もある。また目の異常を放置していると重大な疾患を発症し、最悪の場合は失明に至る怖れがあります」