中国の李克強首相が5月中旬、中国内陸部雲南省の政府機関や大学、民間企業や少数民族の家庭などを視察した。習近平国家主席ら他の中国共産党の最高幹部とは違い、視察中ずっとマスクをつけないで市民らと対話しており、李氏を取り巻く聴衆もノーマスクだったことが関心を集めている。
李氏は習氏とは政治的なライバルであり、水面下で激しい権力闘争をしているとの見方があるなか、李氏が衆人環視の中でマスクをつけなかったのは、新型コロナウイルスの感染防止のため、習氏が主張する「ゼロコロナ」政策への当てつけではないかとの指摘も出ている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
李氏が訪問したのは雲南省の省都、昆明市とその周辺の少数民族居住地で、昆明市では最初に民営の運送会社の社長の自宅を訪問。李氏は最近の運送業の状況について尋ねると、社長は「新型コロナウイルスの感染防止対策で、他の省に出ることが難しく、雲南の新鮮な野菜や果物を全国に届けることができない。収入が少なくなっている」と答えた。
李氏は「私は必ずあなた方が困難を乗り越えるのを助ける。特に運送業界の問題を解決して、この野菜と果物を全国の家庭に届けることを決意した」と社長を激励したという。
李氏は雲南省東部の観光地である曲靖市の少数民族の村でも、市民に生活状態を質問。彼らは「コロナ対策で観光客が来ないので生活が苦しい」などと口々に訴えた。李氏は「観光客が来ないため、借金が返せないのは大変だ。私はこのような苦しい時期を乗り切ることができるように、しっかりと努力する」と答えている。
また、李氏は雲南大学を視察し、学生らと懇談し、リラックスした調子で「雲南大学はやはり注目に値する。将来、雲南大学は君たちを誇りに思うようになるだろう」と述べると、学生たちは「総理、ありがとうございます」などと語り、大きな拍手が巻き起こった。
この1泊2日の視察の間、李氏一行はマスクをはずしており、また雲南大学などの視察先の人々もマスクをつけていなかった。一方、習近平国家主席は5月5日の党政治局常務委員会で、「常に冷静な思考を保ち、動的ゼロコロナという全体方針を常に揺るがず堅持する必要がある。堅持こそが勝利だ」と述べている。習氏のゼロコロナ政策と矛盾する李氏一行の視察時の行動には、いったいどんな意図があったのだろうか。