ステージにたったひとりで立ち、会場を爆笑の渦に包み込む。日本を代表する最強のピン芸人の隣には、かつて相方がいた。いまから45年前、1本のマイクを前に交差した2人の人生は、その後、非情なコントラストで分け隔てられていた──。
収録開始のほんの数分前に、その日のゲストが誰かを伝えられ、直後には硬軟織り交ぜたトーク術と話題の引き出しでスタジオを爆笑の渦に誘う。台本はもちろん、ない。そんなスタイルで、明石家さんま(66才)は30年以上も自身の冠番組である『さんまのまんま』(関西テレビ・フジテレビ系)を続けてきた。どんなに芸歴の長い芸人でも、誰にも真似できない唯一無二の“芸当”だ。そんな伝説に事欠かないさんまは“べしゃり”を武器に、「お笑い怪獣」として芸能界の頂点に君臨して久しい。
だが、さんまがタモリ(76才)、ビートたけし(75才)とともに「BIG3」と呼ばれるずっと前に、お笑いコンビを組んでいたことはあまり知られていない。さんまの口から語られることもない。
1974年、高校3年生だったさんまは落語家の笑福亭松之助さん(享年93)に弟子入りした。当時は同期の島田紳助さん(66才)と一緒に行動し、切磋琢磨する関係だった。
「来た仕事はなんでも引き受けていたそうです。口グセは2人とも“売れたい売れたい”。でも、駆け出しの頃は目立った仕事もないし、当然食べていけない。そんなときにさんまさんに舞い込んだのが、兄弟子とコンビを組んでのテレビ出演オファー。たしか1976年から1977年頃のことです。ピン志向のさんまさんにとって本意ではなかったでしょうが、師匠のすすめもあり、出演を決めた」(テレビ局関係者)
さんまが“組まされた”相方が明石家小禄。本名・高橋平明(72才)だった。
時計の針を一旦、現代に戻す。その高橋が5月19日に詐欺容疑で逮捕された。警察によると、高橋容疑者は2020年、知人の男性に架空のイベント話をもちかけ、200万円をだまし取ったという。典型的な詐欺だ。いまなお輝き続けるさんまとは対照的に、元相方は哀しい末路をたどっていた──。
スポーツ選手の「形態模写」
当時を知る落語家の笑福亭松枝(71才)が回想する。
「小禄はさんまの兄弟子だけど、数か月違うだけでほぼ同期だった。落語の腕はそこそこやったけど、ステージ上での司会進行がうまくて、アドリブで返したりするのは抜群やった。営業先なんかでは重宝されていました」