年を取れば必ず衰えるのが「目」。重篤な症状に陥る前にまず頼るべきは眼科医だが、その技術と姿勢は千差万別。いかに良い眼科医を選ぶかが重要だ。医師を選ぶ際に第一の指標となるのが、「眼科専門医」の資格である。二本松眼科病院副院長の平松類医師が解説する。
「例えば医師免許を持って他分野の研究を主体にしていた人が、眼科を選んで開業するケースがあります。専門性に欠ける怖れがあるので、日本眼科学会の専門医資格を持つ眼科医を選んでほしい。資格の有無は、勤務先の病院や日本眼科学会のホームページなどで確認できます」
手術用設備を用意しなければ眼科開業の初期費用は安く済むこと、また医師免許さえあれば眼科を標榜できることから眼科医は独立開業のハードルが低く、その数も増えているというのだ。また、手術の実績も目安となる。吉祥寺森岡眼科院長の森岡清史医師は語る。
「症例や手術数は病院のHPで紹介されていることがあるので参考にしてほしい」
ただし数字を見る時は、ここ2年ほどはコロナの「受診控え」により手術数が激減したことにも留意しておこう。一方、病院のHPやネットの「口コミ」は当てにしない方が得策だと平松医師は指摘する。
「ネットの口コミを書いているのが患者さんとも限らず、悪徳業者が代金を取ってコメントを捏造するケースもあります。恣意的な加工も容易にできるので、結局は身近にいる友人や知人の意見を聞くことが信頼できる情報を得る近道です」
眼科治療は、医師と患者のコミュニケーションが治療成否のカギを握る。
「目の病気は患者さんによって手術や治療法の判断が微妙な、グレーゾーンの症例が多い。医師が“この治療法だ”と断定できるケースも少ないので、両者の対話がとにかく重要になります。
眼科治療における『いい医者とは何か』という問いは、『幸せとは何か』という問題に似ています。自分のライフスタイルに合わせてどの治療法が望ましいかを、主体的に医師と相談することが満足いく治療につながります」(平松医師)