警察庁が高齢者に「免許返納」を勧めている流れもあり、最近では、西川きよし(75)や二之湯智・国家公安委員長(77)など有名人の免許返納が相次いでいる。一方で「それでも免許は返納したくない」という人たちもいる。
5月13日から75歳以上のドライバーの免許更新に新たに「運転技能検査」が加わった。「認知機能検査」を受ける義務もあり、免許更新のハードルが上がっているが、憲法学者・小林節氏(73)は、免許返納にはまるで興味がないという。小林氏に話を聞いた。
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自宅が郊外にあるので、例えばコンビニや郵便局に行く時などは自分で運転しています。今後も運転免許は返納せず、持ち続けるつもりです。
ただ、先日、免許更新時の高齢者講習を受けて、「自分勝手な運転をしてきたんだな」と気付かされました。実地ではヒヤッとする場面もあり、今は心穏やかに運転するよう心掛けています。都心に行く時は車を使っていましたが、今はタクシーか電車を使っています。
よく、運転免許の返納をめぐって家族が揉めると聞きますが、「オール・オア・ナッシング」は無理だと思う。自身や周りの判断で、車の乗り方や運転の仕方を高齢者でも可能な範囲に限定し、免許を持ち続けるほうが諍いはなくなると思います。
付け加えると、運転免許の返納は憲法13条に定められた「幸福追求権」に関わる問題です。車を運転することは個人の判断であり、行動の自由を得るための幸福追求権に該当します。
とはいえ、車は他者を傷つけることがあり、運転するには能力がなければダメで、だから免許制度がある。これはやはり憲法13条に定められた「公共の福祉」の問題です。そのために運転免許の返納が制度としてある。
幸福追求権を維持しつつ、公共の福祉も踏まえた形での対応が妥当だと考えています。だから私は返納はしないが、運転は可能な範囲に限るという対応を取っています。
※週刊ポスト2022年6月3日号