採用活動を中止する企業が続出したコロナ禍の就職戦線で、志望会社の内定を夢見る一人の女子大生が詐欺師の毒牙にかかった。「縁故採用」をちらつかせて近づいた男の要求は、徐々にエスカレートして……。被害者女性が涙ながらに明かした、おぞましい就活詐欺の一部始終。【前後編の前編】
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就職先が決まらないまま今年3月に上智大学を卒業した玲奈さん(23・仮名)。現在は都内でIT企業の派遣社員をしながら就活を続ける彼女のもとに大阪府黒山警察署から電話があったのは、5月20日朝のことだった。
「Aという男をご存じですか? 現在大阪府警で捜査しており、彼の携帯電話でやりとりがあった方に事情を伺っています」
そう告げられたと玲奈さんは振り返る。
「Aさんと直接の面識はありませんが、西山という人を通じてその人の口座にお金を送ったことがあります。その人は何の容疑で捜査されているんですか?」
玲奈さんが聞くと、「詐欺容疑です。西山という名前も、このAという男が使用していた偽名です」と答えたという。
玲奈さんは驚きとともに、悲しい確信を抱いた。
「ああ、やっぱり全部嘘だったんだ……」
玲奈さんはAに就職活動で騙され、金銭のみならず複数回にわたって性行為まで強要されていたのだ。
「航空会社に入ってCAになるのが私の夢でした。外国語に強い上智大学に入学するために一生懸命勉強したのも、夢をかなえるためだった。
それがコロナ禍になって大手航空会社のCA採用がストップしてしまって。不運を呪い就職活動にも身が入らないなか、バイト先で『俺は大手航空会社・X社の幹部だから、君が本気なら縁故入社で入れてあげられる』と話すAに出会いました。藁にもすがる思いだった私は、その言葉を信じ込んでしまったんです」(以下、断わりのない限り「」内の発言は玲奈さん)