ジェネリック医薬品(後発医薬品)の国産メーカーで近年、不祥事が相次いでいる。ジェネリック製造大手「日医工」(富山市)では、2020年2月、製造工程や出荷検査における長年の不正が発覚。「小林化工」(福井県あわら市)では、2020年12月、水虫薬に睡眠導入剤が誤って混入し健康被害が起きていた事実が判明した。両社とも「業務停止命令」処分を受けたことで、商品の出荷再開が遅れる事態となった。
ジェネリックのメーカーは安価な原薬を調達するために中国をはじめとする海外依存がとりわけ進んでいるが、ジェネリック医薬品の46.6%が、輸入した原薬をそのまま使用している。原薬調達の中国リスクの影響がひときわ大きいうえに、国内での製造工程にも不正が続出するという「二重の問題」が生じているのだ。
改めて説明すると、ジェネリック医薬品は新薬の特許期間が過ぎた後に他のメーカーが製造する薬で、新薬と同じ有効成分を含む。先発薬の開発に9~17年の開発期間と数百億円の費用がかかるところ、ジェネリックは3~5年の期間と数億円で開発できる。薬価を抑えられるので消費者にもメリットがあり、近年急速に普及してきた。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「社会保障費の抑制を目指す政府は、ジェネリックを多く処方した病院や調剤薬局に診療報酬を加算するなどし、強力に普及を後押ししてきました」
2013年、政府はロードマップを作成し、将来的に処方薬の8割をジェネリックに置き換えることを閣議決定。そうした「国策」により、2013年に47%だったジェネリック使用割合(数量ベース)は、2021年9月時点で79%に達している。
ところが、日本ジェネリック製薬協会のまとめでは、現在ジェネリック全体の約4分の1を占める2516品目の出荷が滞っているという(5月10日時点)。
「そうした状態を招く引き金を引いたと言えるのが、ジェネリック大手・日医工の不祥事です」と室井氏が続ける。
「近年、ジェネリック製薬会社の品質管理が問題視されるようになり、その流れで2020年に富山県が日医工への抜き打ち検査を実施した。そこで不正が発覚して製品が次々と回収に追い込まれたのです。製品の出荷再開に時間がかかり、業績も急激に悪化しました。日医工をはじめとする数社の不祥事の影響で、市場に出回るジェネリックが不足しています」(室井氏)