じめじめとしたこれからの季節を。部屋で読書でもして、気分転換はいかがだろうか。そこで、おすすめの新刊4冊を紹介する。
『パパイヤ・ママイヤ』/乗代雄介/小学館/1760円
父が「アル中」のパパイヤ(パパ嫌)と奔放な母と別居するママイヤ(ママ嫌)。17才の2人は海辺の秘密基地で会い、一夏かけて互いを発見する。女子10代の鬱屈はまだ親がかりの閉塞感や窒息感。2人は互いの中に解放の場を見いだす。世に青春小説多けれど、これは古典的品格を備えた思春期(アドレッセンス)小説。木漏れ日のように躍る会話が、生のプリズムを写して眩しい。
『マイクロスパイ・アンサンブル』/伊坂幸太郎/幻冬舎/1430円
わあ、これどうなっちゃうんだろうという不思議な仕掛け。中堅スパイと元いじめられっ子の部下が繰り広げるジミ~な007もの、失恋して営業マンになった男の冴えないサラリーマン生活。いつこの流れが合流するのかと思っていると突如ドラえもん的扉が出現。扉出現の条件に著者らしいオフビートなユーモアがあって笑う。陰の主人公は猪苗代湖。このサービス精神、楽しんで。
『夢見る帝国図書館』/中島京子/文春文庫/891円
語り手の「わたし」は上野公園で独創的衣装の老嬢喜和子さんと知り合う。喜和子さんは「わたし」に「図書館を主人公にした小説を書いて」と頼んでくるが──。物語は2つの時制で進む。現国立国会図書館の前身である帝国図書館の歩みという歴史パート、「わたし」と喜和子さんの15年にわたる友情という軌跡のパート。近現代史をこんな風に書くこともできるんだ、と感嘆。
『伝わるチカラ 「伝える」の先にある「伝わる」ということ』 /TBSアナウンサー井上貴博/ダイヤモンド社/1540円
『Nスタ』総合司会を務める著者が、普段から大事にしているテクを披露する。「。(句点)」をたくさん付けながら話す、自分の意見はシンプルに言い切る、「させて頂く」を多用しすぎない、など。大事なデータは暗記するより原稿を読み上げた方が信頼される、噛んだりトチったりする方が共感を得られやすいなど気がラクになる意外なテクも。プレゼンやスピーチの場面で役立てて。
文/温水ゆかり
※女性セブン2022年6月9日号