「こんな娘がうちにもほしい!」──テレビを観てそう思った人も少なくないだろう。最近、引っ張りだこの姉妹、上白石萌音(24)と萌歌(22)だ。今どきのスレた感じがない、真っ直ぐなキャラクターはどのように醸成されたのか。姉妹の知られざるファミリーヒストリーをお送りする。2011年に開催された「東宝シンデレラ」オーディションで、萌音は審査員特別賞を、萌歌はグランプリを獲得。萌歌が子役モデルとして活躍する一方で、萌音は2011年の大河ドラマ『江~姫たちの戦国』でドラマデビューし、2014年の映画『舞妓はレディ』では初主演を努めた──。【全4回の4回目。第1回から読む】
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芸能界入りの際にグランプリを獲ったのは萌歌だったが、萌音が女優として注目を浴び、今度は姉の背中を追う立場に。アイドル評論家の中森明夫氏が語る。
「2015年に萌音が『赤毛のアン』で主人公アン・シャーリーを演じると、翌年には萌歌が同じ役を務め、萌音が新海誠監督の大ヒットアニメ『君の名は。』でヒロインの声優を演じれば、すぐに萌歌が細田守監督の『未来のミライ』で主人公役を射止めるなど、姉妹で切磋琢磨していった」
そんな2人の初共演が実現したのが、2018年公開の映画『羊と鋼の森』。演じたのは、高校生ピアニストの姉妹役だった。
母親がピアノ教師だったが、萌音は小学1年で「ずっと座って指だけ動かしている」のが性に合わずに頓挫。萌歌に至っては、一度もピアノを習ったことがなかった。
それでも2人は猛特訓の末、吹き替えなしで見事な連弾を披露してみせた。中森氏が続ける。
「『羊と鋼の森』で、萌歌は天才肌で明るい性格の妹、萌音は劣等感を抱く繊細な姉を演じましたが、それぞれの役がその後の女優としての方向性を決定づけたと思います。どちらもピュアさ、芯の強さが印象的ですが、萌音は陰の、萌歌は陽の強さを放っています」
平成生まれの昭和顔
だが、すべてが順調だったわけではない。ターニングポイントとなった人気ドラマ『義母と娘のブルース』(2018年・TBS系)で、萌歌は大きな壁にぶつかっていたと同作の演出を担当した平川雄一朗氏は述懐する。
「第6話で小学生から急に高校生に飛んで、彼女が登場するのですが、かなりのプレッシャーだったと思います。前半の視聴率が高く、キャストも錚々たる面々。チームの中に途中から入っていく緊張感もあったでしょう。
初日の撮影がなんとなくぎこちなかったので、撮影終わりに僕はプロデューサーさん、マネージャーさんと一緒に彼女の控室に行きました。彼女は『プレッシャーが大きくて、うまく自分のパフォーマンスができない』と悩んでいて、僕が『選ばれてるんだから、自信を持って』と言うと、涙を流していました。そこから吹っ切れたというか、演技が生まれ変わったように感じました」