天皇や皇族が、一般国民と触れ合う機会は「公務」の場であることがほとんどだ。式典に臨席されたり、民間団体の活動を視察されたりすることで、その活動自体を世間に広く知ってもらう役割を担われている。
そうした公務には、それぞれのご興味や関心によってある程度の“ジャンル分け”がなされている。たとえば天皇陛下は「水」や「山」にまつわること、皇后雅子さまは「動物」に関することなどだ。東京五輪招致の決定打になった、IOC総会での高円宮妃久子さまのスピーチも、さまざまなスポーツへ造詣や愛情が深かった故・高円宮さまの姿勢を受け継がれてのものだろう。それだけに、6月11?12日に広島県で開催される「全国ろうあ者大会」をめぐっては、宮内庁関係者から戸惑いの声があがるのも無理はなかった。
「佳子さまは、臨席されないのか──」
5月27日、全国ろうあ者大会に、秋篠宮ご夫妻が臨席されることが発表された。
「6月11、12日の2日間、ご夫妻は広島県を訪問されます。滞在中には、平和記念公園で原爆慰霊碑への献花なども予定されています。ろうあ者大会へのご夫妻の臨席は、70回目の節目ということが理由の1つのようです。ご夫妻は5年前、65回大会にも臨席されています」(皇室記者)
紀子さまは大学生の頃から手話を学ばれ、過去に何度となく公務の場で聴覚に障害のある人と交流されてきた。
「ご両親とご一緒に、佳子さまも臨席されると目されていました。佳子さまも紀子さまの影響で手話を学ばれ、公務の折、手話でスピーチされたこともありますから」(前出・皇室記者)
それだけではない。佳子さまは昨年5月から、大会を主催する全日本ろうあ連盟に、非常勤嘱託職員として勤務されている。したがって、当然佳子さまもお出ましになるとみられていた。ところが蓋を開けてみれば、臨席されるのはご両親のみの予定だった。
過去には「父子ふたり公務」も
天皇や皇族と公務の関係を、皇室ジャーナリストが解説する。
「宮内庁が窓口となり、各省庁や団体からのお出ましの希望を受け付けます。ただ、リクエストは天皇皇后両陛下に集中する傾向がある。そのため、公務の内容に応じて、宮内庁がどなたにお願いするかを調整するようです。特に、皇室全体が“高年齢化”している最近は、佳子さまは、若い人が多くかかわる公務へのお出ましが多くなっていたように感じられます」
秋篠宮さまは2004年の誕生日会見で「公務というものはかなり受け身的なものではないか」と述べられた。佳子さまも、2019年3月に大学を卒業された際、「私が何をやりたいかではなく、依頼を頂いた仕事に、一つ一つ丁寧に取り組むというのが基本的な考え方」と表明された。前出の皇室ジャーナリストが続ける。
「たしかに、天皇や皇族は公務に対しては“受け身”です。また、天皇や皇族がご自身の意思で、公務を“お断り”することはありません。しかし、宮内庁が天皇や皇族のお気持ちをくみ取ることはありえます。佳子さまが、職員として勤められているにもかかわらず、ろうあ連盟が主催する大会にお出ましにならない理由には、父母との地方での宿泊公務に前向きになれない佳子さまの心情を、宮内庁側が慮ったとも考えられるのです」