NBIという特殊な光で検査する内視鏡も登場、がんであるか良性ポリープか画像での診断が行なえるようになった。また、がんがごく浅いところに留まっている症例では、その範囲が広くても内視鏡治療を実施できる。
かつて日本人に多かった胃がんの罹患数は現在、減少しているのに対し、大腸がんは年々増加中で、年間約15万人と、がんの臓器別発症では罹患数1位となった。他の臓器に、がんが転移した状態であるステージ4での5年生存率は20%程度だが、転移していない段階であれば進行大腸がんであっても適切な治療で7割近くの患者が治るため、いかに早い段階で見つけるかが治療の第一歩となる。
昭和大学江東豊洲病院消化器センターの田邊万葉医師に話を聞いた。
「大腸がんは症状が出にくく、ステージ4でも無症状の方がいます。患者さんの中には、慢性の便秘だと思っていたり、便に血が混じってはいたが、ただの痔だと思い放置し、その間にがんが進行してしまったケースも珍しくありません。内視鏡検査での早期発見も可能ですが、検査に対する恥ずかしさや下剤を飲むわずらわしさで敬遠する方が多く、それらが早期発見を妨げている現状もあります」
とはいえ、近年の大腸内視鏡技術の進歩は目覚ましく、挿入技術の向上により、検査時間も短くなっている。診断面ではNBIという特殊な光を照射する拡大内視鏡が登場。この青色の光を放つNBIを当てると、粘膜やポリープの表面に血管が浮かび上がるように見える。良性の場合は血管の模様が整然としているのが見て取れるが、がんでは血管の模様に、かなりの乱れが生じているのがわかるのだ。
NBIによって大腸ポリープの表面構造をより細かく観察でき、がん化したポリープの早期診断や、がんの深度の予想も可能になった。またAIが搭載された内視鏡の開発も進み、これまで以上に正確な診断が期待されている。他に治療においても内視鏡での治療可能範囲が広がった。