「定期診断で心臓の数値が悪かったんです。たしかに最近、階段を昇る時によく息切れするようになって……。それで心臓の専門医に診てもらったら“すぐに車椅子です”と言われました(苦笑)」
そう明かすのは、東北楽天ゴールデンイーグルスの初代監督・田尾安志氏(68)。田尾氏は、5月末に国から難病指定されている「心アミロイドーシス」を患っていることを公表していた。
この病は元プロレスラーのアントニオ猪木氏(79)も闘病中であることが知られている。2018年に発症した猪木氏は闘病で「身長が10センチ近く縮んだ」など苛酷な様子を語ってきた。
医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。
「心臓にアミロイドと呼ばれるタンパク質が沈着して障害を引き起こす疾患で、国内で数千人が認定されています。心臓の働きを弱め、心不全のような状態を起こすことがある。半数以上が5年以内に死に至るとされる報告もある」
難病が発覚したいま、どんな心境なのか。関西在住の田尾氏が上京した際に話を聞いた。
「心配していただいていますが、体調は大丈夫です。実はアミロイドが溜まるのを遅らせる効果的な薬が2年半前に開発され、早期発見であれば症状の悪化を抑えられるようになった。生存率が低いとされていたのは、薬が開発される以前の話ですよ。
猪木さんはほかの臓器にも悪い部分があったと聞いています。僕はいまのところ日常生活にも仕事にも影響はないです」
すぐに病状が悪化する恐れはなさそうだが、田尾氏が罹患したことを公表したのは理由があった。
「いまだに“治らない病気”と思っている人が多いですが、早期発見すれば薬で進行を抑えられる時代になった。僕はほかの臓器にアミロイドが沈着しておらず、その啓蒙のために公表したんです。皆さんも体調が変だと思ったらしっかり検査をしてください。今回病気になって、後悔しながら過ごすのではなく、前を向いてどれだけやれるかが大事だと、改めて感じましたね」(田尾氏)
現役時代には恐竜打線の不動の1番打者だった田尾氏が、病との戦いでも“トップバッター”として啓蒙を進めようとしている。
※週刊ポスト2022年6月24日号