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『未来への10カウント』満島ひかりが見せた圧倒的な「彩り力」

木村拓哉に絶賛された満島ひかり

木村拓哉にも絶賛された満島ひかり

 この役が別の俳優だったら作品がどう見えたか想像できない、それほどに鮮烈な印象を残すケースもある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 幕を閉じた話題作『正直不動産』(NHK総合)。主人公・山下智久さんを輝かせた部下、月下役の福原遥さんの「発光体としての力」について当コラムで指摘しました。いやいや、福原さんだけではない。木曜日に最終回を迎えた木村拓哉主演『未来への10カウント』(テレビ朝日系)にも、たしかに存在した! 主人公を一層輝かせる重要な発光体的役者が。

 そうです、満島ひかりさんの存在です。

 主人公・桐沢(木村拓哉)は天才的なボクシング選手だった。しかし網膜剥離で道を閉ざされ最愛の妻は逝去、経営する焼き鳥屋は行き詰まる。人生の紆余曲折を経て影のあるトーンで描かれていく桐沢というキャラクター。しかし、そのモノトーン風の画像に対して、満島ひかりさん演じる教師・折原葵の存在は異彩を放っていました。

 当初、ボクシング部顧問を不本意に押し付けられた葵。しかし次第にボクシングや部員、コーチたちの魅力に開眼し、最終的には彼らの心に火を付ける存在になっていく。今回のドラマで満島さんの圧倒的な「彩り力」に見とれてしまった視聴者、実は多かったのではないでしょうか? いわばモノトーンのキムタク・桐沢の世界を、七色に彩っていく妖精のような満島さんの存在意義は大きかった。

 全身女優とも呼ばれる満島さんは、イタリア系アメリカ人の祖父を持ちラテンの血が騒ぐのか、天然系素っ頓狂な人物をやらせたらピカ一です。いったん役に入り込むと周囲の想定を大きく超えて、どこまでも自由に羽ばたいていく。憑依系の演技をさせたら満島さんの右に出る人はいない。しかし、一方で独りよがりにならない点が魅力です。

 素顔は勤勉な満島さん。事前に役柄や作品についてきっちり勉強するそうで、単なる感覚主義者ではない。

「世界中の街中にあふれている色んな人の届かない気持ちをがむしゃらに届けられる役者でありたい」と過去に語っています。このドラマの中の葵は、教師としての真面目さもきちんと表現されていた。

 さらに、桐沢とのやりとりでは即興もかなりあったもよう。相手の言葉やしぐさを受け止めて、すかさず返していく芝居的運動神経の良さも感じました。キムタクと満島さん二人が存分に即興を楽しんでいたように見受けられ、やりとりがこのドラマの醍醐味の一つになっていました。

 第8話では、目をつむったままの葵が、桐沢にむかって「圭太のお父さんになってもらえませんか?」とお願いする。

 満島さんの演技は実に自然でリアルで独特でした。間をおいてゆっくりと口にしたそのセリフに、揺るぎなく葵の全霊が乗っかっていた。薄く開けた瞳には涙が少しにじんでいる。満島さんの演技に対峙した木村さんも、ぐいっと引き込まれて相乗効果を上げていたように思えます。

 このドラマにキャスティングされた時、「木村さんには、いつも青い炎を感じていました」と語っていた満島さんですが、ご自身は七色の炎を燃やしていた印象でした。

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