来たる巨大地震に備え、国や自治体は着々と準備を進めているが、本当に恐ろしいのは天災が“重なる”ことである。これから雨の季節が本格化する中、もし巨大地震とゲリラ豪雨が同時にやってきたら……。
関西で危惧されるのは「南海トラフ巨大地震」である。「南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会」の被害想定(2013年10月30日)によると、南海トラフでM9クラスの最大規模の地震が発生すると、大阪府の揺れによる建物被害は大阪市を中心に府内のほぼ全域に広がり、全壊・半壊合わせて約17万5000棟に達する。
揺れによる全壊棟数が多いのは、大阪市内は城東区、旭区、此花区、西成区など。大阪市外では、阪南市、泉南市、堺市が上位に位置する。同部会の委員で、関西大学社会安全学部・特別任命教授の河田惠昭氏が語る。
「南海トラフ巨大地震は、直下型地震より地震波の周期が長くなる(振動数が少ない)と想定されています。そのため建物の被害数は低く見積もられていますが、1981年以前に作られた耐震性が脆弱な住宅が密集するエリアは、倒壊の恐れがあります」
これらの被害想定は地震対策に役に立つが、地震単体に備えるだけでは足りない。今、専門家が危惧するのは、複数の災害が時を同じくして起きる「複合災害」のリスクである。
海抜が低く、埋め立て地が多い大阪は以前から液状化が懸念されている。南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会の被害想定によれば、大阪市から堺市にかけての湾岸部は液状化のリスクが高い。さらに大阪市の外縁を液状化の危険度の高いエリアが取り囲み、巨大地震による液状化で7万棟を超える建物が全壊すると想定されている。地震にゲリラ豪雨が加わると、さらなる被害が襲いかかることになる。河田氏が語る。
「大阪で怖いのは、津波による浸水リスクが大きいことです。海抜ゼロメートル地域が多い大阪市でゲリラ豪雨が同時に起きれば、大阪市内を南北に走る松屋町筋の西側はすべて水没する可能性が高い。
また河川の多い大阪府では、津波が河川を伝わって遡上する『河川津波』が発生し、キタ(梅田駅周辺)や寝屋川流域の東大阪市にまで川の水が溢れ出します。そこにゲリラ豪雨が加われば、東京以上に大きな被害に見舞われる可能性があります」