源義経(菅田将暉)、八重(新垣結衣)、後白河法皇(西田敏行)と、前半ストーリーの主要登場人物が次々と世を去り、征夷大将軍・源頼朝(大泉洋)の死期も迫ってきた『鎌倉殿の13人』。これからは主人公・北条義時(小栗旬)ら有力御家人の権力闘争が中心となる展開を迎え、八重との間に産まれた幼い息子・金剛も、後に三代執権となる北条泰時(坂口健太郎)へ成長していく様子が描かれる。だが義時の所領では、その泰時には「兄がいた」という伝説が残っている。
伊豆の国市の江間地区。鎌倉時代には北条氏の支配下にあり、狩野川を挟んで反対側には北条時政が居を構えた北条邸跡や、北条氏の氏寺として知られる願成就院がある。北条義時が「江間小四郎」と呼ばれたことからもわかるように、江間は義時の所領で『鎌倉殿の13人』でも義時が江間を領地とすることを頼朝に所望する場面が描かれた。
現在の江間は伊豆でも屈指の「いちご狩り」スポットとして知られ、シーズンを迎えると各地から家族連れが訪れ、駐車場は自家用車や観光バスで一杯になる。その駐車場周辺には鎌倉時代、大きな池があったと伝わる。伊豆の国市が発行する『北条家 歴史散策マップ』にはこんな解説がある。
《江間の池田(現在の伊豆中央道江間料金所周辺)には、かつて大蛇の棲む池があったそうです。北条義時の長男安千代は千葉寺への勉学のため通っていましたが、ある帰り道に池の堤を歩いていると、突然大蛇が現れて安千代を呑みこんでしまいました。知らせを聞いた義時が弓矢で戦いましたが、大蛇の両目を射ただけで、安千代を助けることができませんでした。2匹の大蛇は日守山へ向かい、男坂・女坂を越えて逃げていきました》
千葉寺は江間の西方にあった寺。日守山は江間の北側にあり、男坂(おさか)と女坂(めさか)はその山道だ。義時に射られた大蛇が逃げた後、池の水が減って田んぼになり、「池田」という地名になったとの言い伝えもある。
義時が建立した北條寺に祀られた阿弥陀如来像は、安千代の冥福を祈って作られたと伝わる。この北條寺の境内には義時夫妻の墓が建っているが、この夫人は正室となる「姫の前」(比奈=堀田真由)ではなく、継室の「伊賀の方」である。(大河ドラマでは菊地凛子が演じる「のえ」として描かれるとみられる)