若者を中心に約1億7000万人のフォロワーを持つ中国有数のインフルエンサー、李佳チー(チーは王編に奇)氏が6月3日、アリババの動画配信サービス「タオバオライブ(淘宝直播)」でナビスコの「オレオクッキー」の実演販売していた際、クッキーとアイスクリームを使った戦車のケーキを見せたところ、突然ライブ配信が中断、画面が真っ黒になり、その後、数日経っても李氏が姿をみせないという事件が起きた。
6月4日は1989年の天安門事件33周年に当たっており、当時、1人の学生が中国軍の戦車の前に立ちはだかり、戦車隊を止めた映像がいまでも出回っている。この学生は氏名不詳のため、「無名の反逆者」、「戦車男」(タンクマン)などのニックネームで呼ばれている。当局が李氏の戦車のケーキ作りを「政治的企み」と判断して、ライブを遮断したとの見方が強まっている。BBCなどが報じた。
1992年生まれの李氏はタオバオライブの出演者のなかでは中国有数の影響力をもつインターネットセレブ。ライブ配信ではスキンケア製品や乳児向け用品、宝飾品、化粧品などを販売してきた。ある時には1回のセッションで1万5000本の口紅を売り、「口紅一哥(口紅の王者)」というニックネームがついたほどだ。
フォロワーの多くは30歳以下の若者で、天安門事件で何が起きたかは教えらえていない世代だ。
そのようななか、ネットでは天安門事件当時の『タンク(戦車)マン』と呼ばれる学生のことが秘かに話題になり、フォロワーの若者たちも当時の「タンクマン」の存在を知るようになった。
李氏と親しい電子商取引企業社員はBBCなどに対して、「李さんは生放送で『濡れ衣』を着せられ、巨額の経済的損失を被った。しかし、そのおかげで、1億人以上のフォロワーが『6月4日天安門事件』の真実を知り、あるいは知りたいと願うようになった」と語っているという。
李氏のプロダクションはソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」のアカウントに「技術的な問題があっただけだ」と投稿しているが、その後も李氏は姿を消したままだ。