便秘薬に下痢止め、整腸剤──お腹の痛みや不調を改善する薬は数多あり、そのほとんどは市販薬として簡単に手に入るが、専門家によれば腹痛時に安易に薬を用いるのは逆効果だという。目黒の大鳥神社前クリニック院長で消化器内科医の北村直人さんが解説する。
「そもそも痛みは体の異変を本人に知らせる大事なシグナル。そのため、たとえば救急外来では原因が特定できない限り痛み止めは使いません。特に腹痛は、胃炎や胃潰瘍から肝機能障害や腎結石、尿管結石などさまざまな原因が考えられる。さらに、心筋梗塞でも胸痛ではなく腹痛が起こることもあるうえ、新型コロナの症状である可能性もあります。
また、過去に痛み止めで無理に胃痛を抑えていた同僚が、実は進行胃がんであることがわかり、ほどなくして亡くなったケースもありました。盲腸だったのに自己判断で胃薬をのみ続けて胃に穴があいて緊急手術になった人もいる。なるべく薬に頼らずに症状と向き合ってほしい」
特に便秘と下痢は鎮痛剤の依存性や副作用も懸念されるため、なるべくセルフケアで緩和したい。
「便秘薬は一度のみ始めると服用量が次第に増えてしまう。運動やお腹を温めることを積極的に行ってください。また、下痢のときに下痢止めはNG。悪いウイルスや菌が排出されるのを止めてしまい、かえって症状が長引きかねません。軽いものであれば食事を抜き、水分を摂って安静にしていれば治ります。ひどければ迷わず病院を受診してください」(北村さん)
痛みに負けない「立ち方」と「眠り方」
普段の生活を改善することによっても症状を問わず痛みを緩和することができる。痛みのセルフケアに詳しいみやおか整体治療室の宮岡大樹さんが真っ先に取り組むべきと話すのは、「立ち方」と「眠り方」の改善だ。
「多くの人が立ち方や眠り方にくせがついており、それがこりや痛みの原因となっています。痛みが出ない方法を身につけてほしい」(宮岡さん・以下同)
宮岡さんによれば、立つときはお尻とお腹に軽く力を入れ、肩甲骨が内側に入らないよう胸を軽く張ることを意識する。眠る際、腰痛の人は反り腰であることが多いため、うつぶせ寝は避け、あお向けになるか、もしくは横向きの場合はひざにクッションを挟むといいそうだ。正しいポーズを身につけたら、水分の摂取も意識したい。
「車のオイル交換と同様、新しい水を体内に入れなければ細胞が活性化せず、筋肉の伸び縮みも自在にできなくなり、内臓にも負担がかかります。意識して水分を多く摂り、古いものを排出していくことで回復力が上がります」