上海では5月末に都市封鎖(ロックダウン)措置が解除された。ロックダウンされていた2か月の間、まったく外出できなかったことや、食料供給が不十分だったことして、上海市政府の無策ぶりに市民の批判が集中しているが、一方で市民の間では中国からの脱出に関心が高まり、海外移住を検討する人々が急増していることが明らかになった。中国のポータルサイト「騰訊(テンセント)網」によると、「カナダに移住するための条件」に関連する検索数がロックダウン前の約30倍に跳ね上がっているという。
上海の資産運用会社の経営者は英BBC放送に対して「上海の富裕層の国内外の資産運用をサポートするのが仕事で、多くの移住民コンサルタント会社や法律事務所と提携関係を結んでいる。このところ移住コンサルタントへの相談は例年の4倍以上に増えている」と明かしている。
とくに、ロックダウン解除後の特徴としては「移住を希望している人の多くは中流階級で、年長者は『アメリカやカナダのバンクーバーに行って老後を楽しみたい』と語り、若い人は『オーストラリアに行って、優雅な生活を送りたい』と言っている。これらの移住希望者に共通しているのは超富裕層ではなくとも、中国政府主導による『ゼロコロナ政策』のような人権を無視し、自由な生活を奪うような強権的な中国政府から逃れたいと考えていることだ」と指摘している。
これを裏付けるように、中国ではインターネット上で、移住をテーマにした「潤学」が流行している。「潤」は中国語の発音のローマ字表記が「RUN(ルン)」で、英語では「RUN(ラン=走る)」という意味になることから、転じて、いまの場所から移るということで、「移住」という意味が含まれており、「潤学」転じて「移住学」となる。
中国のウェブサイト「志乎網」によると、いまや「潤」は海外移住の代名詞であり、「華潤万家」は海外のさまざまな国に移住する中国人を指す言葉だ。上海のロックダウン後、中国のネット上では「潤」という言葉が頻繁に使われるようになり、「人々が社会生活をさまざまに圧迫された結果、移住したり、移住を計画したりする現象」を指しているという。