国内

山口組の分裂抗争がついに終結へ【前編】白昼の住宅街に響いた銃声の意味

ついに終結へ向かうか(六代目山口組の司忍組長/時事通信フォト)

ついに抗争は終結へ向かうか(六代目山口組の司忍組長/時事通信フォト)

 日本最大の暴力団・山口組が分裂してから7年を迎えようとするなか、突如、六代目山口組が敵対勢力、それもトップへの襲撃を始めた。抗争のフェーズが一段階上がり、民間人が恐怖に脅える事態を引き起こしてまで、彼らが狙うものはなにか。暴力団取材の第一人者が深層に迫った。【前後編の前編】

 * * *
 神戸山口組のトップ・井上邦雄組長は激怒したという。

 6月5日午後2時20分、神戸市内の自宅に銃弾が撃ち込まれたからだ。六代目山口組の中核組織・弘道会系のヒットマンは、近くに停まっていた警察車両にもかまわず、ワンボックスカーを玄関前に横付けし、車の屋根に登って住居内部を窺いつつ、合計17発の銃弾を放った。複数の拳銃がなければ短時間にこれだけの銃撃はできない。

 実行犯が所持していたのは回転式拳銃だ。マガジンの交換で、立て続けに連射できるオートマチック式とは違い、数発撃ち終わる度に手作業で排莢し、弾丸を詰め直さねばならない。射撃場ならなんなく出来る作業でも、現場は神戸の住宅街である。目撃者もいるだろうし、連続して銃声が響けばすぐ警察が駆けつける。どうみても逮捕覚悟の犯行だった。実行犯はパトロールの警官を振り切り、近くの交番に出頭した。

 こうした事件を暴力団たちは「ガラス割り」と呼ぶ。半端な暴力を揶揄する隠語だが、事務所や住居などの立ち回り先を銃撃する器物損壊事件は、後のマスコミ報道とセットになっており、広く報道されて初めて仕事として完結する。かつて人気のない早朝に発砲したため新聞報道されず、翌日、再び銃弾を撃ち込んだ組織もあった。ここまで大胆、かつ執拗に発砲し、大々的に報道されたのだから暴力団社会においては相応に見事な仕事だ。銃器を使った犯行は発射罪などが加重され刑期が重い。今回の場合、軽くみても10年以上の懲役になるだろう。

 ガラス割りは単なる脅しに過ぎない。が、銃弾はガラスと同時に、暴力団のメンツにヒビを入れる。やられたら、やりかえさねばヤクザがすたる。報復せずに沈黙するなら、もはや暴力団とはいえないだろう。

 六代目山口組の攻撃は立て続けに行なわれた。

 翌日6月6日の午後9時50分ごろ、今度は神戸市内にある絆會・織田絆誠代表の自宅に軽乗用車が突っ込んだ。実行犯は六代目山口組関係者とみられている。この犯行もマスコミを利用した公開果たし状と考えれば十分な効果がある。実際、この事件もまたマスコミによって大々的に報道された。連日の犯行で過熱した報道陣は喧嘩を煽り立て、六代目山口組は最小の暴力で最大の効果をあげたことになる。

 かつて織田代表は“第三の山口組”と呼ばれた任侠山口組を立ちあげた後、神戸山口組のヒットマンに襲撃され、自宅付近の路上でボディガードを撃ち殺されている。しかし六代目山口組が織田代表を狙って暴力を行使したのは、今回が初めてだった。

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン