ウクライナ国旗の青と黄色の配色は、はるか地平線まで広がる青空と小麦畑を表現しているという。首都・キーウの市場には溢れんばかりの穀物や色とりどりの野菜、生鮮食品が並び、買い求める客の笑顔に、ここが「戦時下」であることを忘れそうになる。だが、この豊穣な大地は、ある男の野望によって囲い込まれつつある。血液のように世界中を巡るこの地域の穀物が支配されれば、人類には破滅的な未来が待っている──。
ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってから、早くも4か月が過ぎようとしている。キーウには、近隣の国に避難していた住民たちが徐々に戻り、不自由ながらも日常生活を送っている。しかし、空襲警報は頻繁に鳴り、6月に入ってからもキーウの鉄道施設などがミサイル攻撃を受け破壊された。2月に出された戒厳令や夜間外出禁止令はいまだに継続中で、街の各所に土のうが積まれ、銃を携えた兵士が警戒を続けている。
アメリカや中国などに続く、世界5位の軍事費をかけるロシアは、ウクライナと比べると圧倒的な戦力を持つ。当初は短期間での占領を目論んでいたが、ウクライナが国を挙げて必死の抵抗を続けたうえに、欧米各国からも強力な支援がなされて戦闘は長期化。欧州の研究機関の試算によると、ロシアの戦費は、人的被害の影響なども含めて1日あたり2兆5000億円を超えるとされる。
プーチン大統領研究の第一人者で、ロシア政府の入国禁止者リストにも載った筑波大学名誉教授の中村逸郎さんが解説する。
「莫大な戦費はもちろん、西側諸国からの経済制裁により、ロシア経済は大混乱しています。ロシア軍も疲弊しており、軍事行動を長くは続けられないでしょう。加えて、破壊し、占領したウクライナの地域を復興させるのにもお金がかかる。ロシアにとっては長引けば長引くほど意味のない軍事侵攻になるんです。そう遠くない未来に停戦合意するなどして終結すると考えています」
それでも、侵攻の爪痕は大きく残る。それは街を破壊されたウクライナだけではない。
「停戦合意に至ったとしても、欧米各国のロシアに対する不信感はそう簡単に払拭できるものではありません。『停戦=経済制裁の解除』とはならないため、ロシアの経済的な苦境は続いていくでしょう」(前出・中村さん)
6月9日、プーチン氏はロシアの若手実業家との対話集会に臨んだ。
「領土を取り戻し強化することは、われわれの責務。今後10年で生活の質は向上する」
この発言はロシア国内のニュース番組ではカットされた。
「裏を返せば“今後10年はがまんしろ”ということです。つい本音が出てしまい、カットせざるを得なかったわけですが、それほどロシア国内の経済状況はボロボロなのです」(前出・中村さん)
※女性セブン2022年7月7・14日号