20代男性の約7割、女性の約約5割が「配偶者や恋人がいない」という調査結果が話題になった令和4年版『男女共同参画白書』(内閣府)だが、社会や人間関係の変遷を調査・分析するだけでなく、社会保障費の削減を推進するための布石がいくつもちりばめられていた。その代表的なものが、配偶者控除の見直しである。俳人で著作家の日野百草氏が、配偶者控除の廃止が生活や人生を左右する人たちの本音を聞いた。
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「いよいよ来たかという感じです。配偶者控除、いずれ無くなるのでしょうか」
6月15日、パートタイムで働く複数の女性たちから異口同音に尋ねられたニュース報道。それは「配偶者控除の見直し」という名の「配偶者控除廃止」への布石ともとれる『令和4年版 男女共同参画白書』(以下、白書)の中身である。前出の問いかけはドラッグストアのパートをしている二児の母親である。医薬品登録販売者の資格を取得しているが、正社員の夫の扶養内、つまるところ配偶者控除が受けられる「103万円以内」で働いている。もっとも、こうした扶養内で働くパートの母親たちの意見はおおむね共通しているため、以降の話者はA子さんやらB美さんのようにはせず、聞き及ぶままに声なき声をまとめ起こすこととする。また専業主婦という言葉には専業主夫も内包していることもあらかじめ断っておく。またどのように働くかの選択は誰に強いられることも妨げられることもあってはならない自然権であり、そうした労働の自由もまた日本国憲法で保障されている。
さっそくだが件の『男女共同参画白書』を開く。白書の冒頭、本件の担当大臣である自民党、野田聖子内閣特命担当大臣が「男女共同参画白書の刊行に当たって」を寄せている。その中では「男性が働き、女性が家庭を守るというかつての家族像はもはや標準ではなく、女性の人生と家族の姿が多様化しています。そうした社会の変容も念頭に置きながら、迅速に対応する必要があります」と記されている。そして次の特集『人生100年時代における結婚と家族 ~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~』と題した導入部、各報道機関でも報じられて話題となった、衝撃的な一文が記されている。
〈もはや昭和ではない。昭和の時代、多く見られたサラリーマンの夫と専業主婦の妻と子供、または高齢の両親と同居している夫婦と子供という3世代同居は減少し、単独世帯が男女全年齢層で増加している。人生100年時代、結婚せずに独身でいる人、結婚後、離婚する人、離婚後、再婚する人、結婚(法律婚)という形を取らずに家族を持つ人、親と暮らす人、配偶者や親を看取った後ひとり暮らしをする人等、様々であり、一人ひとりの人生も長い歳月の中でさまざまな姿をたどっている。このように家族の姿は変化し、人生は多様化しており、こうした変化・多様化に対応した制度設計や政策が求められている〉
筆者もまた、いよいよかという思いである。「ひとり親世帯や単独世帯の増加等、家族の姿が変化しているにもかかわらず、男女間の賃金格差や働き方等の慣行、人々の意識、様々な政策や制度等が、依然として戦後の高度成長期、昭和時代のままとなっていることが指摘されている」という前書きに続くこの一文は、日本政府がいよいよ「人生の多様化」という名目で控除制度、とくにサラリーマンの配偶者に対する配偶者控除および配偶者特別控除(特別控除については後述する)を本格的に見直そうとしている証左と確信する。