ライフ

藤井聡太が叶えた「名古屋将棋対局場」新設 東海地方の棋士50年来の悲願だった

藤井竜王の師匠である杉本八段(左)も愛知を拠点として活動する(写真・時事通信社)

藤井竜王の師匠である杉本八段(左)も愛知を拠点として活動する(写真・時事通信フォト)

 藤井聡太竜王(19)の地元・愛知に、東京、大阪に次ぐ3拠点目の公式対局場がついに新設された。名古屋駅前の複合商業施設「ミッドランドスクエア」の25階のフロアをトヨタ自動車が提供。「名古屋将棋対局場」の新設の背景には、藤井竜王の活躍とその“大師匠”にあたる板谷進九段(故人、1988年没)の存在があった。今回の新設は東海地区の棋士にとって「悲願」だったのだという。

「名古屋将棋対局場」のこけら落としとなった6月22日の今期順位戦A級の初戦では、藤井竜王が佐藤康光九段(52)を101手で破り、初の名人位挑戦に向けて白星発進を決めた。

 藤井竜王にとって対局場の新設は「移動時間の激減」という大きなメリットをもたらす。「名古屋将棋対局場」では、本年度は順位戦を中心におよそ100局が行なわれる予定だ。日本将棋連盟によると、藤井竜王は順位戦9局中6局を名古屋で対局する予定。地元での対局は、体力的・精神的な負担の軽減につながる。将棋ライターの松本博文氏が解説する。

「公式戦は基本的に将棋会館のある東京か大阪で行なわれる場合がほとんどです。愛知在住で関西(大阪)所属の藤井竜王は、東京では前日に1泊。大阪では当日朝、始発近い時間の新幹線に乗っているのだと思います。藤井竜王の鉄道好きは有名で、移動は苦にしていないようでもありますが、それでも名古屋での対局ならば、移動にかける負担は少なくなると考えていいでしょう。5つのタイトルを保持する藤井竜王は、タイトル戦のための地方転戦が多いため、それ以外の対局で名古屋開催のものが出てくるメリットは大きい」

 対局前に長い移動時間がある場合、棋士はどのように過ごしているのだろうか。

「棋士の多くは東京か大阪周辺に住んでいます。地方に住む人は少数派です。関東、関西の棋士がそれぞれアウェイに遠征するケースでは新幹線での移動がほとんどですが、その間の過ごし方はまちまちでしょう。これまでは、そこまで根を詰めて移動中も将棋のことを考えている人は多くなかった。ゆったり過ごして心身を休ませ、翌日からの対局に臨むという棋士がほとんどだったでしょう。しかしコンピュータ将棋(AI)が強くなって以降は、事前の準備が勝敗につながる傾向が強くなりました。現在では移動中もリモートで自宅のハイスペックなパソコンを操作し、研究している棋士もいます」(松本氏)

 棋士の生活サイクルに大きな影響を与えそうな「名古屋将棋対局場」の新設までの道のりには、東海地区の将棋文化の発展に寄与してきた板谷一門の存在がある。名古屋に公式対局場が置かれるまでに実に50年以上の年月を要した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン