北朝鮮は南西部の黄海南道海州市などで「急性腸内性感染症」が発生していると発表した。新型コロナウイルス感染予防のためのうがいなどが原因ではないかとの指摘が出ている。韓国情報機関の国家情報院は昨年10月、新型コロナウイルスに加えて、北朝鮮で水系感染症が広がっていると国会情報委員会に報告しており、専門家は両者の感染は相互に関連しているとの見方を明らかにしている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮の関係者はRFAに対して「政府は新型コロナウイルスの感染予防のため、民間療法による対処法を宣伝している。一例として塩水に柳の葉を入れて煎じたものを飲むことを例に挙げていたが、市民は『そんなやり方で効果があるのか』と疑問視している」と明らかにしている。
韓国の国家情報院によると、北朝鮮では上下水道の施設が整っておらず、腸チフスなど先進国ではまれな病気で、毎年相当数が亡くなっているという。
急性腸内性感染症は通常、汚染された食物や水を摂取することで発症する。下痢や発熱、けいれんなどの症状が出る腸の病気で、腸チフス、赤痢、コレラなどの感染症を指し、放っておくと命にかかわることもある。
北朝鮮当局は新型コロナウイルス対策として塩水でのうがいを推奨している。しかし、ある医療関係者はRFAに対して、「新型コロナウイルス感染予防のため、十分に浄化されていない水でうがいなどすれば、病原菌が体内に入り、腸チフスなどの急性腸内感染症を発症する可能性は否定できない」と指摘している。
韓国政府は先月、新型コロナウイルス感染者の発生を発表した北朝鮮に「防疫協力」を提案したが、北朝鮮当局はこれに応じていない。
金正恩・朝鮮労働党総書記は「急性腸内性感染症が疑われる人を隔離し、感染経路を徹底的に遮断するよう」指示するとともに、金正恩夫妻が自身の常備薬を2回に分けて住民に送ったという。新型コロナウイルスにより防疫が強化されているなか、新たな感染症が広がったことで、住民の不安や不満を鎮めようとの狙いがあるとみられる。