玉ねぎの高騰が続いている中、国会終盤、議員会館の多くの事務所に全国的に有名なブランドとして知られる淡路島産の玉ねぎが段ボール一箱ずつ“お中元”として配られた。
気前のいい送り主は、淡路島を選挙区(兵庫9区)に抱える西村康稔・前コロナ担当相。現在は自民党選対委員長代行として参院選の指揮をとる立場だ。自民党で「将来の総裁候補」として売り出し中の政治家である。自民党のベテラン秘書が言う。
「西村さんの淡路玉ねぎといえば議員会館の名物ですよ。10年以上前から、毎年届けられます。この時期は会館の西村さんの事務所には広い議員応接室がいっぱいになるほど玉ねぎの段ボールが高く積まれる」(自民党議員秘書)
だが、今年は自民党だけではなく、野党である日本維新の会の議員にも配られた。
高騰する玉ねぎをもらって喜んでいるかと思いきや、いきなりの贈り物に戸惑っている様子だ。維新関係者が語る。
「玉ねぎは西村事務所の若い人が台車に載せて運んで来ました。西村先生の名刺が貼られた段ボール箱に大玉が7個入っていましたが、こんな贈り物は初めてなので、そのままもらっていいのかどうか。他の事務所には、『国会で手心を加えてくれということじゃないか』『間違って届けられたかもしれないから返したほうがいいんじゃないか』と言う人もいました」
この玉ねぎ贈与は法律に抵触する疑いもある。
公選法や政治資金問題に詳しい上脇博之・神戸学院大学教授(憲法学)が指摘する。
「基本的に、国会議員が自分の選挙区に寄附を行なうことは公職選挙法で禁じられています。寄附には品物も含まれる。『1票よろしく』『選挙よろしく』と言って渡せば買収、選挙目的ではないお中元であれば買収にはなりませんが、それでは『言わねばセーフ』になってしまうので、事実上の買収を違法な寄附として禁じています。これが『地元寄附の禁止』です。
ややこしいのが自分の選挙区の範囲です。西村代議士は兵庫9区で当選していますが、近畿ブロックにも重複立候補している。次の総選挙でも重複立候補すると見られます。だとすれば、西村代議士は小選挙区内だけでなく、近畿ブロック内への寄附も禁じられていると考えるべきでしょう」
西村氏が玉ねぎを贈った先には、近畿ブロック選出の議員(有権者)も少なくない。
維新のある比例近畿ブロック選出議員の事務所は、この“迷惑な贈り物”に「西村先生とは面識もないし、他の自民党の先生からも(このようなお中元を)いただいたことはありません」と困惑する。
本誌・週刊ポストがこの問題について西村事務所にぶつけると、「仕事でかかわりがあったり、親交のある方のうち、選挙区外の方には、地元のアピールを兼ねて地元県産品を送ることはあります」と回答した。