『鬼滅の刃』の時透無一郎、『東京リベンジャーズ』の河田ナホヤ、『Dr.STONE』のあさぎりゲンや『ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-』の躑躅森盧笙(つつじもり・ろしょう)役などさまざまな話題作に出演する河西健吾(37)。
数多くのキャラクターを担当してきているが、声の特徴とキャラクターの個性がピタッとはまっている印象を受ける。彼が担当したキャラクターを思い出す際に、声も一緒に浮かんでくるという人も多いのではないだろうか。
第一線で活躍を続ける河西だが、インタビューで見えてきた素顔は、まさに戦略家。「声優」という仕事と徹底的に向き合い、周りが何を求めているのかに対してアンテナを張り続け、セルフプロデュースに余念がないのだ。
「実は、お仕事を始めてすぐは、熱血系のキャラクターをやりたいなと思っていたんです。熱血系キャラを担当することが多い声優の関智一さんの演技は、子どもの頃の僕にすごく影響を与え、それは大人になっても変わらないままでした。
ただ、声優として勉強をしていく中で、僕の声質はそっちにはあまり向かないなということがだんだんわかってきました。そして、いろいろな話を聞いて“必要な情報を得ること”や“相手が求めるものを考える”ことの大切さを感じるようになりました。僕はどちらかというと少しクセのあるキャラクターとか謎があるキャラクターの役を多く演じているので、それで知ってくださっている人が多いのかなと思います。なので、今はそういう方向性を重視して、自分を磨くようにしています」
“やりたいこと”と“できること”そして、“求められること”を俯瞰して見て、どうこの世界で生き残っていくのかを戦略的に考え、自分の武器を磨き上げていく──。その姿は、彼が演じるキャラクターの中に通じるものがあるようにも感じる。
「演技の教科書は先輩声優です。ただ単に学ぶだけではなく、そこに自分なりのスパイスを入れられるように意識して作っていくというのが、なんとなくの僕のスタンスです。特に自分が学生時代に見てきたアニメの声優さんの演技からは、非常に影響を受けています。多くの人の演技を取り入れていきたいと思っていますが、特に関智一さんや『銀魂』桂小太郎役で有名な石田彰さんには影響を受けていますね。
ただ、この職業についてから、アニメをリアルタイムで観ることは減りました。自分の演技を磨くために学び、吸収しようと意識しているのは過去のアニメや現在のアフレコ現場です。リアルタイムのアニメは、役者の顔が浮かんでくることがある。ストーリーがとても好みなものは観ますが、役者の顔がちらついて集中できないものに関しては観なくなりました」
“必要な情報を得ること”や相手が求めるものを考えること”を常に意識して行動をしているというが、仕事をする上であえて収集しない情報があるという。
「原作は基本的に読み込みすぎないようにしています。原作は原作、アニメはアニメです。以前、原作が大好きなアニメ作品とのご縁があったんですが、その作品のとあるシーンで監督の方向性と僕の中でのズレがありました。原作で読んできたこのキャラクターはこんな表現はしないというふうに頑なになってしまった。
リテイクを重ねるなかで、僕の中でもなかなか整理ができませんでした。その後オンエアを観ましたが、自分の演技としては中途半端だったと思いました。
アニメってチームでひとつの作品を作っていて、最終的な決断を下すのが監督。監督の頭のなかに皆さんにお届けする一話一話の全体像があるんです。そんな中、『僕はこれがいい!』って言ってもうまくまとまらないし、原作を知った演技になってしまうのもよくないと思うようになりました」