歌手の吉田拓郎(76)が、ニューアルバム『ah-面白かった』を6月29日に発売する。かねて今作が自身のラストアルバムになると明言しているが、意外な大物の参加が明らかになった。同じ1970年にデビューした“同期”の小田和正(74)である。
「同世代のミュージシャンとの付き合いをほとんど断っている拓郎さんにとっては、1歳下の小田さんは唯一交流が続いている盟友のような存在です。最近は数か月に一度、2人きりで会って甘いものを食べながら雑談する“スイーツ会”をやっていて、その席で拓郎さんが小田さんに協力をお願いし、小田さんも二つ返事で快諾したそうです」(音楽ライター)
6月15日に拓郎がゲスト出演したラジオ番組『垣花正 あなたとハッピー!』(ニッポン放送)では、小田が楽曲のアレンジに加え、ボーカルとしても参加することになった経緯を明かした。
「いや、びっくりしましたね。いきなり言われたんでね、あの場で。『一緒に小田と俺がハモんの?』って言ったら、『いいじゃん、思い出作りだから』とか言われて。『思い出作り……そんな言葉、君から聞くとは思わんかった』って」
音楽評論家で尚美学園大学副学長の富澤一誠氏は、この歴史的コラボレーションの意義をこう説明する。
「吉田拓郎は1970年代に若者のカリスマとしてメッセージ性のある歌詞で自己表現を追求してきたアーティストで、一方の小田和正はサウンド重視で音楽性にこだわってきた。その意味では真逆です。
しかし、拓郎は常に新しいものを求めて同じことをやりたくないという思いの強い人ですから、周囲がイメージする、例えば南こうせつや井上陽水といった“旧友”と一緒にフォーク時代の楽曲イメージを引きずるよりは、ラストアルバムといえど音楽的には真逆だった小田和正と組んで新しいものを残したかったのだと思います。いかにも拓郎らしいラストだと思います」
時代のトップランナーであり続けた拓郎は、最後まで明日に向って走ろうとしている。
※週刊ポスト2022年7月8・15日号