「美人」の基準は個人や時代によって変わるものだが、「美肌」であれば、数値データとして解析できる──。化粧品メーカー・ポーラが発表した「美肌県グランプリ2021」によると、美肌県第1位に輝いたのは石川県で、2年連続のトップだった。「美肌県グランプリ」とは、ポーラのパーソナライズドサービスブランド「APEX(アペックス)」が保有する約1970万件(2021年12月末時点)もの肌のビッグデータを活用したもので、2012年から毎年“いい皮膚の日(11月12日)に発表されている。
では、美肌とはどんな状態なのか、なぜ地域によって肌状態に差が出るのだろうか?
美肌かどうかは、「色・形」の8部門(【1】水分量、【2】コラーゲン、【3】皮脂毛穴レス、【4】エイジング毛穴レス、【5】しみレス、【6】キメ、【7】黄ぐすみレス、【8】透明感)と、「ゆらぎ」の5部門(【9】皮脂バランス、【10】タフ肌〈物理的刺激、化学的刺激、マイクロダスト〉、【11】ホルモンバランス、【12】ストレス耐性、【13】ニキビレスに加えて、【14】肌ポテンシャル(肌三層〈うるおいを保って透明感のある角層を生み出す表皮、ハリ感や弾力を生み出す真皮、肌のクッション性を維持する皮下組織〉がこの先きちんと機能を発揮できるかどうかの予測)の計14部門によって評価が決まる。
しかし、同じ日本の中で、居住地域によって肌状態に差が出てくるのは、環境の影響もあるのでは……そう考えたポーラは、日本気象協会との共同研究を進め、その結果、さまざまな要因を発見した。
まずは、1年を通して肌に影響を与える4つの気象環境について、同社のAPEXブランドマネージャー・佐々木雅之さんに解説と、美肌を守るためのアドバイスをしてもらった。
うるおいを左右する水蒸気密度
水蒸気密度とは、大気中に含まれる水分量のことで、空気1立方メートル中に水分が何g含まれているかを、その温度での飽和水蒸気密度×相対湿度から導き出したもの。
「空気中の水分量が少なく、空気が乾燥してくると、肌表面(角層)の水分が蒸発してしまいます。そのため、肌がカサついて肌荒れや小じわなどのトラブルを起こしやすくなります。角層が乱れると外部刺激も受けやすくなり、肌が敏感な状態になりがちです。
空気は温度が高いほど多くの水分を含むことができる性質があります。そのため、相対湿度が同じ50%でも、0℃の空気の水分量は1.9g、22℃では8.2gとなり、4倍も違います。気温の低い北日本は、相対湿度が南日本と同じでも、空気中の水分量が少なく乾燥しているので、肌にとっては厳しい環境にあります。徹底した保湿対策で肌を守りましょう」(佐々木さん・以下同)
水蒸気密度が低い地域:北海道・青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・群馬県・長野県
紫外線ダメージにかわる日照時間
日照時間が長いと紫外線にあたる時間も長いと考えられる。それがしみやそばかす、しわ、たるみを引き起こす原因となり、ハリや弾力感を奪う大きな要因にもなる。
「UV-Aは窓ガラスも通過するので、外出時はもちろん、室内でも日焼け止めを塗ることが大切です。顔だけでなく、首やデコルテも忘れずに塗ってください。体の中からの紫外線対策として、ビタミンA・C・Eを多く含むかぼちゃやアーモンド、アボカド、トマトなどの食品の摂取もおすすめです」
肌くすみを決める気暑くすみ
気圧の変動によって頭痛や眠気などの体調の変化が起きることが知られているが、肌にも悪影響があることがポーラのビッグデータにより発見された。
「気圧が低くなると自律神経が乱れて末梢血管が収縮して血行不良となり、肌に充分な血液がめぐらずに肌色が暗くなります。これを『気圧くすみ』と名付けました。
対策としては、毛細血管が多く存在する耳をもんだり、表情筋の凝りをほぐすマッサージがおすすめです」
気圧くすみの影響があるのは……青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県・新潟県・富山県・石川県・福井県・山梨県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・和歌山県・香川県・愛媛県・福岡県・佐賀県・長崎県・沖縄県
肌のうるおいを奪う、2種類の肌荒風
日本には、肌のうるおいを奪う2つの“肌荒風”が吹いていることがわかった。
「秋から冬には、高い山脈を越えてくる『乾燥型の肌荒風』が吹き、これを受けると肌がカラカラに乾いてしまいます。朝昼夜しっかり保湿ケアをすることで乗り切れます。
冬から春にかけては、狭い平野を通り抜ける『突風型の肌荒風』が吹き、これを受けると皮膚の温度が低下して乾燥してしまいます。保湿ケアに加え、血行促進のためのマッサージも取り入れるといいでしょう」
乾燥型:茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・東京都・神奈川県・山梨県
突風型:福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・和歌山県・広島県・山口県・徳島県、福岡県・佐賀県・大分県
取材・文/山下和恵
※女性セブン2022年7月7・14日号