巨人にとって、あまりに痛すぎる一敗だった。6月26日のヤクルト戦は壮絶な打撃戦の末に10-11で敗れ、開幕76試合目で自力優勝の可能性が消滅。6月26日の自力V消滅は球団史上最速の屈辱となった(6月28日試合開始前時点)。スポーツ紙の遊軍記者はこう振り返る。
「巨人の逆転優勝は風前の灯火になったと言っていいでしょう。2008年、原辰徳監督は阪神との最大13ゲーム差をひっくり返す『メークレジェンド』でリーグ優勝を飾りましたが、あの時とは状況が違います。
特に首位ヤクルトとの差は投手起用でしょう。今回の3連戦でヤクルトは2戦目に5-19と大敗を喫しましたが、投手を3人しか使っていない。一方、巨人は大量リードにもかかわらず『勝利の方程式』を担う平内龍太をつぎ込んだ。
3戦目もリーグトップの7勝を挙げている戸郷翔征を中4日で先発させましたが、直球に本来の球威がなく3回持たず6失点KOを食らった。中4日での先発起用を否定するわけではありませんが、戸郷は昨年も中4日の登板で結果が出ていません。球種が少ないパワーピッチャーなので球威が落ちるとなかなか修正しにくい面もあるでしょう。コンディションがパフォーマンスに直結しやすい投手ですから、起用法にもっと気を遣ってもよいのでは」
原監督と高津臣吾監督の起用法は対照的に見える。原監督の「目の前の1勝」を取りにいく采配に対し、高津監督は選手のコンディションを見極めて無理をさせない。逆転勝利を飾った3戦目も先発のスアレスが3回途中5失点KOと試合を作れず降板すると、2番手で救援登板したのはサイドスロー右腕の小澤怜史。小澤はこの日に支配下選手として公示され、1軍昇格したばかり。前回の1軍登板はソフトバンク在籍時の2017年8月25日のロッテ戦。1766日ぶりの1軍マウンドだった。
大事な試合であることは間違いないが、まだペナントレースは折り返しにも入っていない6月。首位攻防戦でも高津監督の方針はブレない印象だ。役割分担を重視した起用法に選手たちも応える。小澤は4回2失点の好投で逆転勝利の立役者になった。
ヤクルトは日本一を達成した昨季、規定投球回数に到達した投手が1人もいなかった。2ケタ勝利もゼロで、小川泰弘と奥川恭伸の9勝が最多だった。しかし、救援陣に過大な負担をかけたわけではなかった。3連投以上は極力避け、1点リードの9回に守護神・マクガフを温存した試合もあった。今季は奥川が開幕直後に戦線離脱したことも影響し、絶対的エースがいないなかで戦っているが、方針は変わらない。ベテランの石川雅規は登板した8試合すべてで中10日以上の間隔で4勝をマーク。6月24日の巨人戦で6勝目を挙げた高橋奎二も翌日に登録抹消されて休養を与えられた。