子供が通う学校や教師に対して不当な要求やクレームをする保護者のことをモンスターペアレント、ネットではおもに略してモンペという呼び名が定着し、非難される在り方として知られている。とはいえ、その存在は根強く悩まされる人は今も少なくない。それに続く存在になりそうなのが、選挙になると立候補者の近くに出現して、あり得ない言動をするモンスター有権者と呼びたくなるような人たちだ。ライターの森鷹久氏が、注目を集める「票ハラスメント」の実態についてレポートする。
* * *
参院選を直前に控え、テレビ新聞各社が選挙戦に関連するニュースを報じ始める中、6月23日、TBSは女性議員たちが悩む「票ハラスメント」問題について取り上げ、大きな反響があった。番組内では、東京都内の現役女性区議が経験したとおぞましい「票ハラ」の実態を紹介。有権者から、票が欲しいのなら「ほっぺにチューをして」と言われた、握手だと思ったら執拗に手を触りつづけられた、という生々しい証言が飛び出した。
その前日には、福岡県議会で「議員に対するハラスメント」を防ぐ条例案が可決。有権者が投票と引き換えに不快な言動を議員に行う「票ハラ」だけでなく、議員を目指す人や秘書、事務所スタッフら関係者に対するハラスメントの防止も含まれているという。
「こうやって票ハラの実態が明るみになったことはよかった。今回の参院選では、女性候補の割合も過去最多。でも、一番重要な部分が語られていない。指摘もされていない」
こう話すのは、北部九州地区の現役市議・A子さん(40代)。A子さん自身も選挙時に、有権者の男性からハグを迫られたり手を執拗に握り締められたりした経験があると話すが、票ハラはそれだけではない。
「地元の集会所などを回るのですが、行き先で地元の有権者たちが飲み会を開いているということもしばしば。有権者の男性に手酌をしてまわり、肩を抱かれ、キスされた経験もあります。まるでホステスのようですが、地元では『これが慣例だ』と、所属政党の支部長に言われてしまいました。有権者からも『サービスしろ、議員なら市民を喜ばせろ』と野次まで。悔しくて涙が出ましたが、我慢するしかなかった」(A子市議)
いくら地方都市とはいえ、地域の「政党支部」公認するどころか、もっといえば政党が強要する「セクハラ」が展開されていたというのだから空いた口が塞がらない。
「東北や関東にいる知人の女性市議も、同様の被害を受けたと、全国大会などの会合で私に打ち明けてくれたことがあります。みんな我慢しているのです」(A子市議)