全米屈指の犯罪都市でもあるロサンゼルス。そこで警察官として日夜、公務に励む日本人女性がYURI(永田有理)さんだ。34歳の時に現地のポリス・アカデミー(警察学校)に入学して警察官になり、世界有数の危険地域の治安維持に奮闘する彼女の目に、いまの日本社会はどう映るのか。日本に7年ぶりに一時帰国したYURIさんに話を聞いた。【前後編の前編】
──YURIさんはロスではどのような仕事をしているのですか。
YURI:ロサンゼルス近郊を巡回するパトロールが主な任務です。毎朝3時に起きて軽く筋トレをして、5時から勤務。朝イチのミーテイングでは「昨日はここで殺人事件があった」とか、「このエリアで麻薬犯罪が増えている」などの情報を頭に叩き込み、パトカーに乗り込んでパトロールしています。
日本の「防犯意識の低さ」に驚いた
──世界有数の犯罪都市と恐れられるロスの治安はいかがですか。
YURI:もともと治安の悪い地域ですが、コロナ以降はさらに犯罪が増えました。身の回りが物騒だから銃を持とうとの一般人の意識が高まり、自粛期間中でもガンショップの前にだけ行列ができていました。私は一人でパトカーに乗ってパトロールすることが多いですが、「これはヤバそうだな」という現場に遭遇して、応援を呼ぶ機会が増えました。
一部のアメリカ人はポリスが大嫌いで、私たちを見るといきなりドーナツを投げてきたり、スマホの動画で警察官の動向を撮ってライブ中継を始めることがあります。日本のお巡りさんは地域に受け入れられているけど、向こうは警察に対するリスペクトがゼロの人がいるのでなかなか対応が難しい。
──5月に日本に一時帰国されましたが、およそ7年ぶりの日本はどうでしたか。
YURI:やはり気になるのは防犯面の危機感の低さです。とくに驚いたのは電車の中。みんな座ると同時にスマホを開いて画面に集中して、周りのことをまるで気にしていません。スマホを見ながらヘッドフォンで音楽を聴く人がいましたが、ダブルパンチでヤバい。アメリカでそれをやると窃盗や強盗に遭う確率が高く、シューティング(銃撃戦)が発生したら確実に逃げ遅れます。駅のホームで酔っぱらって寝ている人がいたことにも驚きました。
それに夜道は街灯がなくて暗い。犯罪者が“今日は道端で5人刺そう”と目標を立てたら、簡単に達成できるでしょうね。歩道は狭く、樹木などで車道と隔てられているので人が隠れていても見つけられず、いきなり襲われたら逃げようがない。
──カフェや娯楽施設などでも、席にカバンを置いたままトイレに行く人がいます。
YURI:パソコンまで席に置いていく人がいてびっくりしました。アメリカなら確実に盗まれます。アメリカ人は店などでトイレに行く際、隣りの見知らぬ人に『ちょっとこのパソコン、見ておいてね』と言ってからその場を離れますが、日本ではそうしたコミュニケーションは見かけません。隣りの人に頼まないのなら、カバンや荷物は絶対にトイレまでもっていくべきだと思います。