17のゴールをあらわす色を使った丸形のカラフルな「SDGsバッジ」を上着の襟につける人が増えている。だが、様々な場面で言及は増えたものの、制度や組織の変革には繋がっていないという指摘が日本だけでなく世界でもされている。日本でも少し前までは様々な場面でSDGsという言葉をたびたび耳にしたが、近ごろはそんな機会も減少ぎみだ。ライターの宮添優氏が、SDGsについて盛んに発信してきたテレビ局が抱える矛盾についてレポートする。
* * *
「SDGsなんて、今は誰も口にしませんよ。あんなに連日、繰り返し特集していたのに、なかなか見かけなくなったでしょう」
東京・港区内の大衆居酒屋で話すのは、都内のテレビ局で情報番組のデスクをつとめる大石理恵子さん(仮名・30代)。確かに大石さんが言うとおり、少し前にテレビや新聞であれほど取り上げられていた「SDGsネタ」は、本当に少なくなった。新型コロナウイルスや、ロシアによるウクライナ侵攻など「SDGs」どころじゃない、という現実が影響している可能性もあるが、お金をかけずに効果が高い、つまり収益につながるテーマが優先されるからだという。
「とにかく金になる事業を考えろと、ことあるごとに言われています。それを言うのは社員なわけですが、彼らは彼らで、お偉いさんにお尻を叩かれ、放送とは全然関係のない事業に重点を置くよう命じられる。そして私たちは、テレビしかやってこなかった上司たちの元で、より短時間でより数字の取れる番組を作れとハッパをかけられています。『休みを取れ』と言われますが、仕事が終わらないくて、サービス残業どころかサービス出勤をしなくては間に合わないのが実情です」(大石さん)
急にSDGsばかり重点的に取り上げていたのに、パタリと見かけることがなくなったのは、金回りのよいところを不自然についてまわっているからだと、都内のテレビ局で報道部署から営業部署に移籍したばかりの正社員、岡田快斗さん(仮名・30代)は言う。