依存症からの脱出は難しい。それが違法薬物にかかわる場合、それまでの交友関係をすべて断ち切って入手できない環境に身を置くことが重要だと言われている。だが、現実には、交友関係を自分から消すのは難しい。俳人で著作家の日野百草氏が、執行猶予中に地元の柏駅前で田中聖容疑者が逮捕されたことをきっかけに、薬物犯罪から更生できる可能性について考えた。
* * *
「めっちゃ元気でしたよ。聖さん柏のスターですし、やっぱ目立ちます。すぐわかります」
筆者はこれまで何度か取材の過程でこの聖さん、元KAT―TUNメンバーの田中聖さん(以下、聖さん)について耳にしてきた。『「私たちの勝ちですよ」休業を選んだパチンコ店幹部は言った』など、コロナ禍でのパチンコバッシング取材ではたびたびこの柏を中心に関係者と話した、旧友とも話した、その中でたわいもない話として地元のスター、聖さんの話は必ず出てきた。この千葉県柏市は野田市生まれ(この一帯を「東葛」と呼ぶ)の筆者にとって思い出の地である。この男性の発言も、一連の取材の中で2020年の夏ごろ、その「たわいもない話」として出てきたものだった。
「柏まつりとかも来てました。やっぱ地元が好きなんだなって思いましたよ」
「柏まつり」といっても東葛周辺の地元民くらいしか知らないかもしれないので説明すると、元は柏商工会議所が柏駅周辺を盛り上げようと1970年代に始めた駅前祭りで、毎年7月に催される。筆者の子どものころは愛してやまない東口の「柏そごう」(そごう柏店)と柏の象徴だった展望タワービルも営業していて現代のそれとは違う「昭和の活気」があった。大相撲の麒麟児(柏出身)が来ていたのを覚えている。失礼な話だが麒麟児そっちのけで「来年はドリフターズとか来ないかな」「(初代)タイガーマスクとか来ないかな」などと勝手な願望をマルイの地下のゲーセン(通称、マル地下)に入り浸っては小学生同士で話していた。少し時代は新しくなるが、聖さんも昭和に生まれ、平成の柏で育った。
「昔は弟たちも連れて来てました」
弟とは田中樹さんのことだという。同じくジャニーズのSixTONESに所属する人気アイドルである。兄弟でいたのを見かけたのは2000年代ということで樹さんはまだ小学生とかだったろう。同じく弟で歌手、俳優の田中彪さんもいたかもしれない。
「イケメンですから、昔から目立つ兄弟なんですよ」