岡本和真が“松井秀喜級”の活躍をして巨人を奇跡の逆転Vに導けるか──。7月6日、セ・リーグ2位の巨人は岡本の9試合ぶりの一発や吉川尚輝のサヨナラヒットで首位のヤクルトを倒し、8カードぶりの勝ち越し決めた。同時に、ヤクルトの連続カード勝ち越しは14でストップ。両者のゲーム差は11.5になった。この数字は、巨人が大逆転優勝を果たした1996年、首位・広島との間に開いた最大ゲーム差だ。絶望的な状況ではあるが、巨人ファンにとって印象深い“11.5ゲーム差”からのミラクルは起こるのか。プロ野球担当記者が話す。
「ゲーム差が大きく開くと、巨人ファンの中には1996年の『メークドラマ』、2008年の『メークレジェンド』の再現を拠り所にする人もいます。ただ、1996年は首位の広島の投手力が弱く、4番の江藤智の右目眼窩底骨折もあり、後半戦失速していった。2008年は首位の阪神が北京五輪でクローザーの藤川球児、正捕手の矢野輝弘、不動の3番打者の新井貴浩を欠いたまま夏場を戦い、新井は五輪で怪我を悪化させ、帰国後も欠場を余儀なくされた。
その一方で、今年のヤクルトは投手力が強く、連敗を何度も繰り返すとは思えない。怪我人続出などの不測事態が起こらない限り、巨人の逆転優勝は考えづらい。それでも敢えて、大逆転のキーマンを上げるとすれば、岡本和真が1996年の松井秀喜並みに打ちまくることでしょう」
『メークドラマ』を起こした1996年、4年目の松井が大きく花開いた。長嶋茂雄監督の「松井が40本打てばメークドラマが実現できます」という言葉を現実にするように、松井は打ちまくった。首位・広島に11.5ゲーム差を付けられた翌日の7月7日から9月3日まで、松井がホームランを打った日は14連勝と“不敗神話”が出来上がり、7月、8月と2か月連続で月間MVPを獲得。最終的には打率3割1分4厘、38本塁打、99打点で大逆転優勝の立役者となり、シーズンMVPも受賞した。
「岡本は松井と同じ6年目にホームラン、打点の2冠を取っていますし、その年から2年連続2冠王です。これは松井も成し遂げていない快挙で、巨人では王貞治以来の記録です。それでも、チームが勝てないと槍玉に上げられてしまう。
特に、今年は首位を走るヤクルトの4番である村上宗隆が大活躍しているため、比較されて物足りないと言われることもある。巨人の4番の宿命とはいえ、優勝から程遠くなっている現状を岡本の責任にするのは酷でしょう。今年も現時点で21本塁打、62打点で共にリーグ2位ですよ。ただひとつ気になる点があるとすれば、好不調の波が激しいこと。これが改善されると、さらなる飛躍が期待できる」