NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、源頼朝(大泉洋)が死亡し、物語はいよいよ後半戦へ。ストーリーの鍵をにぎる女性たちの暗躍を、歴史学者が解説する。【全3回の1回】
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夫を操る権力の亡者
第26話(7月3日放送)では死亡した源頼朝の後継を巡り、妻の北条政子(小池栄子)とその妹・実衣(宮澤エマ)が言い争うなど「女同士の対立」が浮き彫りになってきた。
この後、政子の父である北条時政(坂東彌十郎)が幕府の権力を握ることになるが、その時政を掌で転がしているのが、妻のりく(宮沢りえ)だ。
鎌倉時代に詳しい歴史学者の細川重男氏によれば、この先の北条家内部の争いでは、りくがキーパーソンになるという。
「りくは北条義時(小栗旬)を押し退け、時政との子・政範を後継者として担ごうとします。しかし先妻の子である政子からすれば、政範が家を継ぐのは面白くない。これがのちの親子争いの火種となっていくのです」(以下、「」内はすべて細川氏)
政範は16歳の若さで亡くなるが、それでもりくの暗躍は続く。
「りくは時政を唆し、実権を握ろうとする。義時の異母妹・ちえ(福田愛依)の夫である畠山重忠(中川大志)に謀反の罪を着せて滅ぼし、さらには娘婿の平賀朝雅(山中崇)を将軍に就けようと、政子の子・実朝(柿澤勇人)の暗殺まで謀ります。
しかし暗殺の企みは失敗し、りくは時政とともに伊豆に流刑とされる。
彼女は京都の公家の生まれで、元々はそれなりのお姫様でした。年の離れた田舎のオヤジとの結婚で最初は嫌だったと思いますが、『ここから出世してやる』と権力志向が芽生えたのでしょう。『吾妻鏡』では“権力の亡者”として描かれていますが、ドラマでは悪女っぽく見えて実はけっこう良い人として描かれているところが印象的」