当たり前に利用しているものが突然、使えなくなったとき、人々は驚き怒り、大混乱するのではないかと思っていた。完全復旧まで3日半かかったKDDIの大規模な通信障害によってauの携帯通話とデータ通信ができなくなったとき、ショップで怒鳴り散らす人の様子がSNSですぐ拡散されたが、実際のユーザーたちはどう向き合っていたのか。俳人で著作家の日野百草氏が、auユーザーの声なき声を聞いた。
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「これからもauにしようと思います」
筆者にとって驚くべき声だった。7月2日の未明から続いたKDDIのau携帯電話サービス(UQ mobile含む、以下au)の大規模通信障害は、auおよびau系ユーザーのスマートフォン(以下、スマホ)が通じないと大混乱に陥った。各地でつながらない、仕事にならない、緊急連絡もできない状態が2日間、断続的にはそれ以上続く事態となった。さっそく筆者も思い当たるauユーザーの知り合いかつPCで連絡のとれる方々をヒアリングしたが、その中で出てきたauユーザーでもある50代のDTPデザイナーの言葉にはっとさせられた。
「だって、あの社長の会見を見たら信用できるでしょう、ネット民もそんな感じですよ」
テレビ報道ではauショップの行列や不満の声、ときに怒号などがクローズアップされていたが、確かにSNSを中心に「auがんばれ」「auありがとう」のツイートも多く流れていた。
「どこだって問題は起きるわけですから、起きたからって変えてもしょうがないでしょう」
確かに、ソフトバンクは2018年に、NTTドコモは2021年に大規模な通信障害を起こしている。楽天モバイルもこれほど大規模でないにせよ立て続けに通信障害を繰り返している。国内でおよそ2億件とされる携帯電話契約数(総務省・2021年9月末時点)を人間が毎日処理していることを考えればヒューマンエラーは当然起こりうる。起こしてはならないことは百も承知だが起きてしまう。『きかんしゃトーマス』の歌「じこはおこるさ」(Accidents Will Happen)ではないが「事故は起きるもの」なのは仕方がない。
「そんなことはまともな社会人ならみんな知ってますからね。自分だってそうです。でも(auの)社長は技術屋出身だから全部理解した上で説明していたでしょう、誰かの書いた紙じゃなく、起きていることと、なぜそうなったか、それでもわからないということを正直丁寧に説明していました。私は感心しました」