芸能

『鎌倉殿の13人』を待つ2通りの悲劇 脚本・三谷幸喜氏はどちらを選ぶのか

せつを演じる山谷花純(C)NHK

物語はいよいよ後半戦へ/写真=せつを演じる山谷花純(C)NHK

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、劇中では源頼朝(大泉洋)が死亡し、物語はいよいよ後半戦へ。ストーリーの鍵をにぎる女性たちの暗躍を、歴史学者が解説する。【全3回の2回。第1回から読む】

 * * *

板挟みになる第二の妻

 北条家に滅ぼされた一族出身の女性たちの、その数奇な運命が時代を彩る。北条義時(小栗旬)の元に嫁いだ比企家の比奈(堀田真由)は、その伯父・比企能員(佐藤二朗)と妻の道(堀内敬子)が北条家と対立した『比企の乱』ののち、離婚を余儀なくされた。

 鎌倉時代に詳しい歴史学者の細川重男氏が解説する。

「比奈は頼朝の乳母・比企尼(草笛光子)の実子である比企朝宗の娘。義時と結ばれましたが、幕府のトップを争う比企家と北条家の板挟みになってしまいました。

 ただ義時との関係が良好だったのか、離婚後も北条家との関係は良かったとされる。義時の次男・朝時と三男・重時を産み、その子孫はそれぞれ北条氏の有力分家となっています」(「」内以下同)

 ドラマでは義時の最愛の妻・八重(新垣結衣)の死後、両親の画策に従って比奈が義時に接近したように描かれたが、史実は違うようだ。

「『吾妻鏡』によれば、義時が比奈に惚れて何度もラブレターを出したけど、振り向いてもらえない。頼朝が仲介して、2人をくっつけたとされています。ドラマでは義時が八重を裏切るような、史実通りの展開にはできなかったのでしょう」

2通りの悲劇が待つ

 源頼家に見初められて結婚し、長男・一幡を産んだ比企能員の娘・せつ(山谷花純)は政争に巻き込まれる。頼家にのちにつつじ(北香那)に乗り替えられる悲運な女性だが、その死に様は歴史資料によって異なるという。

「『吾妻鏡』によれば、比企の乱で比企一族は一幡の屋敷に立てこもり、最後は自ら火をつけて全滅したとされています。せつもその場で子とともに焼死したと考えられる。

 一方『愚管抄』によれば、せつは幼い一幡を抱いて屋敷から逃げ出そうとした際に義時に捕まる。義時は一幡をしばらく生かしておきますが、義時の部下が一幡を刺し殺したと書かれています。

 一幡は政子の孫に当たるので、義時や政子からすれば殺したくはなかった。脚本の三谷幸喜さんがどちらの悲劇を選ぶのか、注目しています」

(第3回につづく)

※週刊ポスト2022年7月22日号

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン