7月1日に中国返還25周年を迎えた香港で、習近平中国国家主席を迎えての記念式典や李家超(ジョン・リー)行政長官就任式へのメディアの取材が大幅に制限されていたことが明らかになった。ジャーナリストのブラックリストを作成し、記念式典会場への入場を禁止する措置をとっており、取材制限を受けたメディアの中には日本の報道機関も含まれている。
1997年の英国統治下で行われた香港返還記念式典では世界中から1000人以上のジャーナリストが取材に訪れるなど、自由に取材できた。しかし、それから25年後の中国統治下の香港では取材制限も中国本土並みとなった実態が明るみに出た形だ。
香港記者協会によると、香港のメディアでは中立系紙「明報」、英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」、ネットメディア「香港01」、AFP通信やロイター通信など、香港駐在記者ら報道機関7社の記者10数人が、式典などに関する取材活動を禁止された。
香港政府のメディア規制当局である新聞処は香港記者協会に対して、この理由について「セキュリティー上の理由」としている。しかし、取材を拒否されたジャーナリストのなかには、香港政府の民主化指導者の取り締まりの実態を暴くなど、「反体制的な」報道姿勢が強い記者が含まれており、香港当局が意図的に取材リストから外したとみられている。
香港以外でも、北京など中国本土駐在の外国メディアのジャーナリストも式典取材を申請していたが、日本の報道機関を含む多くのジャーナリストが報道ビザを発給されなかった。なかには、前日に香港入りし、ホテルにチェックイン後にプレスクラブに赴いたものの、取材を拒否され、活動ができなかった記者もいた。
これについて、当局は新型コロナウイルスの感染対策などの理由で「招待された」メディアだけが記念式典や就任式に出席できるとしており、出席できる記者やカメラマンの人数について、「最大で20人」の上限を設けていたという。
香港記者協会の陳朗昇会長は「多くの外国、香港のメディアは政府から招待されておらず、取材登録すらできない。 政府に認められて登録できるようになったメディアは、(当局が)ジャーナリストごとにバックグラウンドのチェックを行ったようだが、政府の基準がどうなっているかは明らかにされておらず、当局がジャーナリストのブラックリストを作っていたことはほぼ間違いない」と指摘している。