北朝鮮では6月下旬から7月初めにかけての豪雨で、首都・平壌を流れる大同江が危険水位を超え、住宅地などが冠水したほか、同国全域で緊急の災害警報が出るなか、土砂崩れが起き、農産物に大きな被害が出た。
ところが、韓国でも同程度の豪雨があったが、特別な警報は出されておらず、深刻な被害もなかった。この違いは北朝鮮の防災対策が不十分なためだという。
朝鮮中央テレビによると、6月26日から29日午後までに平壌で338ミリ、西部の南浦市で351ミリの降水量をそれぞれ記録。7月2日までに多いところでさらに200~300ミリの雨が降った。このため、金徳訓首相が6月末、予報を担当する気象水文局と国家非常災害委員会を訪れるなど対応に追われたという。
米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」は平壌の消息筋の話として、低地にある平壌の平川地区と大同江地区では、泥流が押し寄せ、下水道が溢れて悪臭を放っている状況だったという。このため、平壌市人民委員会は25日、すべての地区の住民委員会や企業、団体に災害防止に関する行政指示を出し、平壌周辺地域の道路や田畑の浸水を防ぐため、すべての市民に「総動員」を命じた。
これらの被害について、首都圏の市民は「今回の災害は下水道や農地などの排水施設の管理を普段から怠っていたために発生したのだ。市当局が上下水道や河川、貯水池の改修、排水施設の管理をきちんと行っていないことから被害が拡大した。災害が起こってから人手に頼るのではなく、技術や科学的な手法で事前に管理すべきだ」と市政府の対応を非難している。
また、この豪雨によって、米やトウモロコシ、野菜などの食糧生産に懸念が生じ、市の生活に大きな打撃を与えることを心配する声も出ているという。
朝鮮労働新聞は27日、「地域と単位を守る精力的な活動」との見出しを掲げて、「地域と県の党委員会、行政機関、勤労団体の幹部は、人命を守る高い意識を持って、危険地域を具体的に掌握し、防災作業を水際で行った」と報じている。しかし、住民らはRFAに対して「その実態はまさに付け焼刃で、彼らは右往左往するばかりで、何の対策もとれず、被害が拡大するのをぼんやりと眺めているだけだった」と語っている。