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「胃腸薬を長く服用すると糖尿病リスク高まる」との研究結果 そのメカニズムは

胃腸薬と糖尿病の関連性は?(イメージ)

胃腸薬と糖尿病の関連性は?(イメージ)

 薬は身体の不調を治すためのものだが、どんな薬にも必ずリスクはある。医師から十分な説明を受けずになんとなく習慣で飲んでいる薬が、健康に悪影響を与えているかもしれない──。そう考えさせられる重大な最新研究の結果が海外で発表された。

“奇跡の薬”のはずだが…

 病気やケガの治療のため、薬を何種類も併用するケースは少なくない。高齢者ほどその傾向は強く、厚労省の統計(2021年)によると、「7種類以上の薬」を処方されている患者は75歳以上で24.2%にのぼる。

 薬の成分の代謝・排出機能は歳を重ねるごとに衰えていくため、自身が服用する薬のリスクについては正確に知っておく必要がある。

 そうしたなかで今年4月、ある薬と病気に関する研究結果が発表され、注目を集めている。

 米国内分泌学会誌オンライン版に掲載された、イタリアのミラノ・ビコッカ大学の研究だ。

 同大学の研究チームは、イタリア・ロンバルディア州で、2010~2015年の間に胃腸薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用し始めた40歳以上の男女約78万人を、2020年まで平均6.2年間追跡調査。その結果、ある事実が判明したという。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。

「調査対象の約78万人のうち、PPIを服用し始めた後に『糖尿病』と診断された人が5万人強いました。さらに服用期間の違いごとに分析すると、PPIを長く服用した人ほど、糖尿病の発症リスクが高くなることが分かったのです」

 論文によると、PPIの服用期間が8週間未満の群に比べて、8週間~6か月の群では1.19倍、6か月~2年の群では1.43倍、糖尿病の発症リスクが高まった。さらに2年超の群では同1.56倍まで増加した。糖尿病を発症した人の平均年齢は66歳、男女比は半々だったという。

 PPIは世界でもメジャーな胃腸薬として知られ、日本でも非常に馴染み深い薬だ。医療・医薬品の情報調査を手掛けるエンサイスの集計によると、昨年度の医薬品年間売り上げランキング(薬価基準ベース)では、3位にタケキャブ、7位にネキシウムと、PPIが2つランクインしている。

 PPIとはどんな薬なのか。消化器内科が専門の一石英一郎医師(国際未病ケア医学研究センター長)が解説する。

「胃薬のなかでも新しい薬で、最初のPPIは日本で1991年に発売されました。その効き目の切れ味のよさから“奇跡の薬”と呼ばれ、今や世界各国で最も広く使われる薬の一つになりました。胃酸の分泌を強力に抑制するため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療薬として、また、解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の副作用の『潰瘍』の予防のためにもよく処方されています」

 多様な目的で重宝されるメジャー薬だが、先述した論文の結論は、「医師は、特に長期の不必要なPPIの処方を避ける必要がある」だった。

 なぜ、胃腸薬を長く飲み続けると、糖尿病の発症リスクが高まるという結果になったのか──。

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