北朝鮮の朝鮮人民軍は米国のバイデン政権が北朝鮮政府との交渉に関心を示さないことに強い不満を抱いており、米国に対する報復として6月下旬から7月下旬までのほぼ1か月間を「反米共闘月間」に指定した。軍所属のすべての将兵らに、米国が朝鮮民主主義人民共和国にとっての主要な敵国であることをこれまでの歴史や両国の戦力比較など改めて学ばせるという。
反米共闘月間は2018年にトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党総書記との米朝首脳会談が行われて以来、実施されていなかったが、バイデン政権が発足したことで、4年ぶりに復活したことになる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が北朝鮮の軍関係者の話として伝えた。
この1か月間の軍事教育プロジェクトは朝鮮戦争(1950年6月~1953年7月)開戦の1950年6月25日にちなんで、これまでほぼ毎年6月25日に開始、休戦協定調印記念日が1953年7月27日だったことから、同様に7月27日に期間を終えていた。
今年の軍事教育プログラムについて、同筋は「人民軍総政治局は米国を主敵とする新しい反米教育資料を作成し、すべての下級部隊に送付した。6月25日から、すべての部隊は毎日1時間程度行われる精神教育の時間に、反米教育を受講している」と述べている。
この軍事教育プロジェクトが中断されていた2018年からの4年間は軍内で米国を呼ぶときには、トランプ大統領らを刺激しないように「帝国主義」という比較的柔らかい言葉を使っていたが、今回は以前と同じように、「帝国主義的な侵略者」とより厳しい言葉を使うように変更されたという。
また、同筋は「総政治局は反米共闘月間に各部隊の政治部が各軍事教育センターを訪問するよう指示。政治部は将校や兵士を組織して、センターで行われている授業に参加させなければならない。これを拒否する兵士は処罰の対象となり、厳しく罰せられるとともに、失点となるので各地の軍指導部者は神経を尖らせている」と明かしている。
これらの軍事教育センターは北朝鮮のすべての省、市、郡に設置されており、反米、反韓、反日の資料を集めて展示している。また、総政治局は「朝鮮人民の絶対的敵である米帝国主義の侵略者をすべて撃滅せよ」というスローガンを掲げた新しい宣伝看板を兵舎に掲示するよう全部隊に指示している。