多くの人の視線が集まる前で、白昼に突如起きた惨劇──現職の国会議員で元首相である安倍晋三氏(享年67)が銃撃されるという、令和の世とは思えない大事件を引き起こしたのは、41才の男だった。裕福な家庭に生まれ、学業成績も優秀ながら、家族関係に悩み続けた山上徹也容疑者(41才)。一体何が、彼を凶行に走らせたのか。
「母親が宗教団体に多額の献金をして破産した。家庭を崩壊させた団体を恨んでいた」
山上容疑者は、凶行の動機をそう供述している。自宅マンションから押収されたノートには、母親が入信する宗教団体「統一教会」(現・「世界平和統一家庭連合」)への恨みが記述されていたという。また「家庭を壊した団体を日本に招いたのが岸氏(岸信介元首相)。その孫の安倍氏が国内に広めたと思い込んで狙った」とも話している。
山上容疑者の母方の祖父は、もともと奈良市内で建設会社を営んでいた。
「会社の横では焼き肉店も経営していて、商売上手で事業は順調。ただ、容疑者の祖母が亡くなったのをきっかけに、奈良市内の別の場所に引っ越した」(近隣住民)
その転居先は、安倍氏が銃撃された近鉄・大和西大寺駅から車でおよそ20分の距離にある閑静な住宅街。戸建て住宅が立ち並ぶ一角に、かつて、100坪はゆうにある広い敷地に情緒ある和風の邸宅があり、その家が幼少の山上容疑者が暮らした家だ。ちょうどその頃、三重県で暮らしていた山上容疑者も幼くして父親を亡くし、母・兄・妹とともに、祖父の暮らす家へと移った。容疑者が5才頃のことだ。
「広い庭で、おじいさんがお孫さんたちと遊んでいる姿を見かけました。お母さんは若い頃から持病があって、体調が不安定なせいか家にこもっていることも多かったようです」(一家を知る人物)
当時はバブル真っ只中で、祖父の会社も羽振りがよく、毎週のように高級車でゴルフへ出かけていたという。
「当時、エアガンを使ったサバイバルゲームが流行っていて、あの家ではほかの子供たちが持っているものより高価なエアガンを買い与えられていました」(山上容疑者の兄の友人)
しかし、その陰で家族の崩壊は始まっていた。